米国特許実務



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注意) 下記のコンテンツは、2003年以降は更新していません。
目次

第1部 米国特許実務

1.米国特許の取得方法の解説

2.他人の米国特許の無効化の方法の解説

3.米国特許の権利範囲の判断方法の解説

4.米国特許の権利行使の方法の解説

5.米国特許の価値評価の方法の解説

6.日米の特許訴訟の重要判決のモニタリング

7.日米のIT分野の重要特許の抽出と紹介

8.米国特許に関する権利期間、手続期間、手数料などの算出ツールの提供

第2部 ソフトウェア知的財産権実務とビジネスモデル特許

9.ソフトウェア知的財産権の実務

10. ビジネスモデル特許の発明の仕方と権利活用

11.ソフトウェア知的財産権およびビジネスモデル特許についてのリンク集


第1章 米国特許の取得方法


第1節 特許要件(この条件を満たせば特許になる)

米国特許を受けるための条件は、次の表のとおりです。各条件は、詳しく見ていくと複雑になりますが、段階的に詳細化して説明していきます。
米国特許法(大きなpdfファイル、最新の法律の内容)
米国特許法(米国発明者保護法による改正などが未反映につき注意)米国特許審査便覧MPEP Index米国特許法(1999年法)抜粋  Intellectual Property Regulations (37 C.F.R.) などを参照しつつ説明します。
米国特許実務ノートU.S.A.知的財産法判例ノートも非常に参考になります。
表1: 米国特許の要件
特許要件詳細項目根拠条文
出願が発明者自身によってされていること 米国憲法は、発明者だけが、その発明や発見についての排他的権利を有するとしている。(米国憲法第8条
  • 発明者は自然人でなければならない。
  • 発明は、着想、実施化に向かう中間的活動、実施化という段階を経るが、着想に寄与していない者は発明者ではない。
  • 発明が共同でなされた場合には、共同で特許出願しなければならない。
  • 特許出願におけるクレームの補正や分割出願によって、どのクレームの発明者でもなくなった者が発生した場合には、その特許出願における発明者ではなくなるので、出願人でもなくなる。したがって、その場合には発明者適格の訂正手続が必要となる。
発明者と発明に関するQ&A
101条
115条、
116条
特許法の保護対象の発明であること 新規で有用な方法、機械、製造物、組成物あるいは、新規で有用なそれらの改良が保護対象とされる。
保護対象とならないものは、次のとおりである。
  • 印刷物
  • 自然発生物
  • 自然科学の原理
  • 心理的過程
  • なんら協同作用をもたらさない単なる寄せ集め


注1) 現在、ソフトウェアの発明は一定の要件のもとに特許として認められている。(Computer-Related Invention Guidelines
上記審査基準の概要を説明する

注2) 長年にわたり特許性を否定されていたビジネスモデルの発明も、1998年のステートストリート銀行事件CAFC判決を機に、一挙に認められるようになった。米国特許庁ではビジネスモデル発明に関して様々な基準や資料を公表している。
101条
新規性があること クレームの構成要件の全てを満たす技術が、次のいづれかの場合に該当すれば、そのクレームの新規性は否定される。
  • 出願人の発明日前の刊行物記載(102条a項)
  • 出願人の発明日前の、他人による特許権取得(102条a項)
  • 出願人の発明日前の、合衆国内での公知・公用(102条a項)
  • 出願人の発明日前の、他人の出願に係る合衆国特許の存在(102条e項)
  • 特許権や特許出願の間で、先発明者はどちらであるかによって真正な特許権者たり得る者を争うインターフェアランスの手続きにおいて、出願人の発明日前の、他方の出願人による先発明の存在(102条g項)
    (注: 出願人が発明日を立証しない限り、出願日を発明完成日として審査手続が進行する。MPEP706.02)


  • 出願人の出願日より1年を越えて前の、他人による合衆国又は外国での特許取得(102条b項)
  • 出願人の出願日より1年を越えて前の、刊行物記載(102条b項)
  • 出願人の出願日より1年を越えて前の、合衆国内での公用および販売(102条b項)
  • 出願人の出願日よりも12ヶ月を越えて前に、外国で出願人等によって出願された特許出願に基づく特許が、米国出願前に与えられるか、与えられ得る状態になっていること(102条d項)

  • 他人からの発明の知得(102条f項)
102条
非自明性があること 先行技術から見た発明の困難性で判断される。
先行技術とは、102条(a)、(b)、(d),(e),(f),(g)に該当する技術である。

ただし、同一の組織の従業者の公知でない発明が非自明性の判断基準とならないようにするための例外規定も設けられた。
103条(c): 発明時点で同一の者に所有されているか、譲渡義務の対象となっている発明であって、102条(e)または(f)または(g)のもとでのみ先行技術とされるものは、非自明性判断の際の先行技術としてはいけない。

発明の困難性の判断基準は次のとおりである。
  • 特許発明の構成が別々の先行技術文献に記載され、その構成を組合せることを教示または提案する記述がなければ非自明性がないとの主張は成り立たない。
  • 非自明性を肯定するための二次的な評価の観点は、次のとおりである。
    1. 長期にわたって認識されていたが解決されなかったニーズをその発明で解決したこと
    2. 問題は存在していたが、当業者にも問題は見えていなかったという評価がされること
    3. ニーズを満たそうとする当業者の試みはあったが、問題の理解の失敗の為に問題が解決されていなかったこと
    4. 宣伝や魅力的な包装よりも、発明自身が発明実施製品の商業的な成功の原因であるということ
    5. 先行技術による製品が、発明実施製品で置き換わったこと
    6. 競合製品よりも際立っている物として、競合者による発明品の模倣をもたらしたこと
    7. ライセンスを得る事や、侵害をしないようにするという形で、産業界で特許の有効性の名声を得たこと
    8. 当業者が考えていた技術の方向性が、特許権者の技術の方向性と逆方向であったこと
    9. 当業者が予期しないような効果の出現
    10. 特許権者が示した課題解決の方法がうまくいくとは、当業者が信じていなかったこと
103条
有用性があること次の全ての条件を満たす場合に有用性があるとされる。
  • 一定の機能を果たす、反復性のある作用を持つこと。
  • 人の役に立つこと。 目的を最小限達成すればよい。
  • 目的が違法ではなく、道徳・公共政策に反しない。
101条
出願書類をそろえて出願していること 出願書類は、次のものからなる。
  • 明細書(112条を満足するもの) (明細書の作成の仕方を参照のこと)
  • 必要な図面(113条)
  • 自分が発明主題の最初の発明者であると信じると発明者が述べた、公証宣誓書(oath; 115条)または宣誓書(declaration; 115条)
112条
ベストモード(発明者の発明した最良の形態)を記載した出願であることノウハウの温存と米国特許法におけるベストモード開示義務112条
補正書が要旨変更をするものでないこと 132条
特許査定を得て登録料を支払っていること 特許査定の日から3ヶ月以内に所定の登録料を支払わねば、特許は放棄されたものとなる。 151条


第2節 特許権取得手続き

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ステップ手続きの内容分岐手続き
ステップ1出願人: 特許出願の実行

  • 出願後の任意の時点で補正書を提出できる。

    上記の第1回目の局指令(first office action)の前に提出される補正(amendment)は、予備的補正(preliminary amendment)と呼ばれる。
  • 2000年11月29日以降の出願は、一部の例外を除き、出願から1年6ヶ月後に公開される。
  • 出願日から3ヶ月以内に情報開示陳述書(IDS)を提出する。ただし、この期間を経過後は、証明書(提出する情報を知ってから3ヶ月以上を経過していないことの言明など)と手続料金を支払えば、情報開示陳述書(IDS)を提出できる。(IDSについては、37 C.F.R.1.56を参照)
    IDSの提出義務は、特許出願が放棄されるかまたは特許が発行されるまで、存在する。詳細は、「IDSに関して一言」を参照のこと。


ステップ2特許庁: 出願受領書の発行

出願番号と出願日がわかる
ステップ3特許庁: 第1回局指令(Initial Office Action)を発行する

1. 審査段階の局指令には、次の3種類がある。長官は局指令の理由を示し、出願手続続行の適否を判断するのに有用と思われる資料を添付して出願人に通知する。すなわち、各クレームについて許可可能かどうか、拒絶する場合には拒絶の理由と引例などを示す)
  • クレームの拒絶
  • 方式に関する拒絶
  • 命令 (例: 
    1. 限定命令 : 一出願での発明の単一性を維持するために、審査対象とするクレームの限定を求める(37CFR1.142)
    2. 選択命令 : 親クレームの特許性に疑問がある場合、子のクレームが別個独立のクレームとなり、出願の単一性を満たさなくなる可能性がある場合に、予め子のクレームの仮の選択をさせるもの
ステップ4出願人: 第1回局指令への応答として、補正書(amendment)、意見書(remark)の提出

第1回局指令に応答する際、出願人は原出願の記載に根拠を有する範囲内で、クレームも含めて明細書、図面について自由に補正できる。すなわち、クレームしていなかった発明をクレームしても良いし、新しいカテゴリーのクレームの追加もできる。(37 C.F.R. 1.111, Reply by applicant or patent owner.

局指令の内容に応じた出願人の行なうべき対応を示す。
  • クレームの限定要求への対応
  • 拒絶理由通知への対応の一般事項
    1. 応答期限を確認する。
    2. 拒絶されたクレーム、許可可能なクレームを確認する。
    3. 対応する出願(パリ条約による優先権主張の基礎とした特許出願や他のパテントファミリー)の審査状況や実施状況などからみた発明の価値を判断し、権利化作業を続行すべきかどうかを決定する。
    4. 拒絶理由、引例の日付を確認し、引例の日付からみて適正な拒絶かどうかを確認する。特に、優先日と引例の日付の関係に注意する。


  • 101条に基づいた拒絶への対応
  • 102条に基づいた拒絶への対応
  • 103条に基づいた拒絶への対応
  • 112条に基づいた拒絶への対応

応答とは別個に、IDS(情報開示陳述書)として提出が必要な情報(未提出であって、その特許出願の特許性判断に重要な関連がある情報)があるかどうかを検討し、提出が必要な情報があれば、提出する。

第1回局指令には、その局指令の発送日から、応答期間として通常、設定される3ヶ月以内に回答しなければならない。ただし、請願をし、手数料を支払うことで、設定された応答期間後5ヶ月または、本来の法定応答期間である局指令の発送日から6ヶ月のどちらか早い方まで応答期間を延長できる。(133条37CFR1.136(a),(b))
ステップ5特許庁: 許可通知(Notice of Allowance)の発行

特許要件を満足する特許出願であると審査官が認めると、審査官は許可通知(Notice of allowance)を発行しなければならない。許可通知を受けた出願人は、許可通知の発行の日から3ヶ月以内に登録料(Issue Fee)を納付すれば、特許が発行される。期間内に登録料の納付がなければ、出願は放棄されたものとみなされる。
特許庁 : 最終局指令(Final Office Action)

特許出願の実体審査をしたうえでの2回目の局指令は、通常は最終局指令となる。

最終局指令へは、最終局指令の日から3ヶ月に設定された短縮法定期間内(延長可)に、応答しなければならない。この設定された応答期間内に応答しなければ、出願は放棄されたものとなる。(37 C.F.R. 1.135)  ただし、この応答期間の延長は、最終局指令の日から6ヶ月までの範囲に制限される。

ステップ6出願人: 許可通知(Notice of Allowance)への対応をする。

許可通知の受領後、登録料の納付前にすべき事項は、次のとおりである。
  • IDS(情報開示陳述書)として提出が必要な情報(未提出であって、その特許出願の特許性判断に重要な関連がある情報)があるかどうかを検討し、提出が必要な情報があれば、提出する。
  • 分割出願や継続出願すべき発明があるかどうかを検討して補正する。
  • クレームに誤記があるかどうかを見なおして、誤記があれば補正する。

特許権を取得する必要があると考えたならば、許可通知(Notice of allowance)の発行後、3ヶ月以内に登録料を納付する。(登録料の金額については、 37 C.F.R. 1.18 を参照)
出願人: 最終局指令への応答をする。

応答としては、次のものがある。
  • クレームの補正: 補正は、クレームの削除,審査官に指摘された形式上の不備を是正する補正、審判請求の前提として拒絶されたクレームをより良い形に補正するものに、制限される。(37 C.F.R. 1.116
  • 拒絶されたクレームについて、審判請求(Notice of Appeal)すること。(134条
  • 宣誓供述書(Affidavit)または宣言書(declaration)を伴なった応答であって、クレーム補正を伴なわないものを提出すること。(37 C.F.R. 1.131, 1.132
  • 継続出願(120条37 C.F.R. 1.53)。 
  • 一部継続出願(37 C.F.R. 1.53(b))
  • 出願の放棄(応答期限内に応答しなければ、放棄となる)
  • 法律や技術に関する審査官の誤解、誤認を解消するための議論や証拠の提出
  • 最終局指令の条件が成立していないとの議論を展開する。(例: 補正していないクレームを、それまで未引用の引例を初めて引用して最終拒絶している場合である。本来は、この場合には、最終でない第2回目局指令であるべきである。)
  • 発明登録制度の活用(157条


応答とは別個に、IDS(情報開示陳述書)として提出が必要な情報(未提出であって、その特許出願の特許性判断に重要な関連がある情報)があるかどうかを検討し、提出が必要な情報があれば、提出する。
ステップ7特許庁: 特許証を発行する。(Letters Patent)
最終局指令以降の手続として、審判請求の手続に関して説明する。

(最終局指令への対処には様々あるが、継続出願、一部継続出願については、出願からのステップを繰り返すだけになるので、それ以上の説明はしない。)
ステップ1出願人: 審判請求書(Notice of Appeal)を提出する

最終局指令の日から3ヶ月に設定された短縮法定期間内(延長可)に、審判請求しなければならない。この設定された期間内に応答しなければ、出願は放棄されたものとなる。(37 C.F.R. 1.135)  ただし、この応答期間の延長は、最終局指令の日から6ヶ月までの範囲に制限される。

審判請求書の様式は、審査便覧MPEP1205に記載されている。
ステップ2出願人: 審判理由補充書(Appeal Brief)を提出する

提出期限: 審判請求書の提出日から2ヶ月以内または最終局指令の応答期間のどちらか遅い方が、審判理由補充書の提出期限となる。(37 C.F.R. 1.192

ステップ3特許庁: 審査官回答(Examiner's Answer)を提出する

審査官は、審判理由補充書を出願人が提出した日から2ヶ月以内に審査官回答を、作成しなければならない。
審査官回答の内容は、37 C.F.R. 1.193(a) と、審査便覧MPEP1208に規定している。審査官回答には、以前に行なった事項に関する議論のみならず、新たな論点を含ませても良い。ただし、新たな拒絶の対象を審査官回答で提起してはいけない。
ステップ4出願人: 再理由補充書(Reply Brief)を提出する。

審査官回答の発送の日から2ヶ月以内に、再理由補充書(Reply Brief)を、出願人(審判請求人)は提出する権利を有する。(37 C.F.R. 1.193)
この再理由補充書によって、出願人(審判請求人)は、審判の前に行なえる最後の意見陳述をすることとなるので、これによって主張すべき事項をわかりやすく述べねばならない。なぜならば、審判部(Board of Patent Appeals and Interferences)の審判官(administrative patent judeges)は、多くのケースを抱えていて多忙であるため、各ケースに費やせる時間が少ないためである。Reply Briefのフォーマットのサンプルを示す。
ステップ5特許庁: 審判決定(Decision of the Board)

審判決定は、審判の対象となったクレームごとに、審査官の拒絶を覆すか、維持するかを決める。または、訴訟上の必要性から、1つ以上のクレームについて審判請求を却下する。審判では、いかなる係属中のクレームについても、新たな拒絶の理由を提起することができる。(37 C.F.R. 1.196)
ステップ6特許庁: 許可通知(Notice of Allowance)
特許庁: 拒絶(Rejection)

New!第2章 他人の米国特許の無効化の方法


他人の特許を無効にする方法には、@連邦裁判所への訴訟提起、A特許庁への情報提供、B再審査請求、の3つがある。

他人の特許権を無効にすることに関係する条文を、説明する。

第301条(先行技術の情報提供制度)の概要
特許権の成立後に適用される制度であり、誰でも、いつでも、特許または刊行物からなる先行技術を書面で特許庁に提出できる。先行技術の適用における妥当性と、どうして対象特許が先行技術で無効になるかというような関連性を書面で説明した場合には、提供した情報は包帯書類の一部となる。特許庁は情報提供された先行技術に関して、回答の義務を負わない。先行技術を情報提供する者は、自分が誰であるかという情報が包帯にはいらないようにすることを、書面で請求できる。

第302条(再審査の請求制度)の概要
誰でも、いつでも、第301条の規定によって情報提供された先行技術に基づいて、特許のどれかのクレームの再審査を特許庁に請求できる。再審査請求書には、再審査請求の対象とするすべてのクレームに対する先行技術の適合性と関連性を記載しなければならない。

再審査請求に関する基本事項:
  1. 再審査は誰でも請求できるが、一方の当事者だけが関与する。
  2. 特許をつぶすための根拠は、文献に記載された先行技術に限られる。すなわち、つぶしの根拠条文は、102条103条のみとなる。
  3. クレームの範囲は減縮できても、拡大はできない。
  4. 再審査のスピードは、通常の審査よりも速く、再発行よりも速い。
  5. 再審査の後に続く手続は存在しないので、再審査の結論の意味は大きい。(再審査の中間段階で、特許権者は不服を申し立てる手段はある。第306条)
  6. 法定再審査が開始されると、それは最後まで実行される。
  7. 再審査において新規事項の追加はできない。
  8. 再審査手続の結論として、特許庁は、審査前の特許のままで認める証明書か、あるいは、再審査手続の結果を反映した特許の補正の証明書を発行する。


特許つぶしのための先行技術情報入手の手段
  1. つぶしたい特許と、つぶし資料の提供者への賞金を提示して、不特定多数の人々からのつぶし資料の提供をつのるサイトであるBountyQuestを利用する。
  2. データベース(日本国特許庁の公報テキスト検索米国特許公報の検索サイト)を用いて、オーソドックスに先行技術を見つける。
  3. 米国連邦議会図書館関西特許情報センター日本の国会図書館に行って、手めくり調査でオーソドックスに先行技術を見つける。
  4. 発明者が、出願の1年以上前に発表している文献があるかもしれないので、発明者をキーに調査してみる。
  5. その特許の技術分野で、その特許出願の日よりも前から長年にわたって研究に従事している学者を発見し、その学者の研究室にある文献を調査させてもらう。

第3章 米国特許の権利範囲の判断方法の解説


  1. 【権利の有効性の確認】
    その特許権の権利期間内に、侵害判定の対象行為の実施時期が含まれているかどうか。権利維持費が支払われずに権利が消滅しているかどうかの確認も必要である。(ただし、年金不納で消滅していても、復活する道も残されているので注意が必要。 また特許権として成立していても、特許権の取得の過程でIDS違反があれば権利行使不能の特許になる。特に対応外国出願がつぶれていた場合、つぶれた根拠となった公知文献が、その米国特許の登録料納付前に特許権者に通知されていたにもかかわらず、審査官に届いていなかった場合、IDS違反となる可能性があるので、注意が必要。)
  2. 【クレームで表現された権利範囲の確認】
  3. 【文言侵害判定の実施】
    独立クレームを構成要件に分解し、侵害行為を構成する物または方法が、全構成要件を満足するかどうかを判定する。全構成要件を満足すれば、文言侵害となる。

    全構成要件を満足しなければ文言侵害とはならないが、以下に述べる「均等論」による侵害と間接侵害の可能性は残るのでチェックが必要。また、文言侵害であっても、審査経過書類に記載された主張が用語の意味を、対象物や対象方法が該当しないような意味に限定していたり、特別な効果を主張しているのに侵害判定の対象物や対象方法がそれを持っていなかった場合には、禁反言の原則から非侵害となる。
  4. 【均等論の適用】
  5. 【間接侵害の適用】
    文言侵害に該当しなくても、271条(b)項に規定する間接侵害(侵害教唆、幇助)に該当するかどうかを判定する。271条(c)項は、(b)項の中の代表例として規定されたものである。侵害教唆の行為に該当するものの代表例は次のとおり。 271条(c)項に規定する間接侵害に該当するためには、次の全条件を満足していなければならない。



第4章 米国特許の権利行使の方法


第1節 権利行使の一般的な手順

  1. まずは、権利行使できそうな自社の特許権を抽出する。抽出の基準は次のとおり(全てが満足されるのが望ましい)
  2. 権利行使できそうな自社の特許権にカバーされそうな他社製品のあたりをつける(ただし、この段階ではあまりコストをかけないで調査する)
    その方法としては、インターネットのホームページ、雑誌の記事、論文記事、展示会での出典内容などから他社製品の調査をするという方法がある。最もコストが安いのがインターネットでの調査である。インターネットでの他社製品の調査のこつを下記に記載する。
  3. こうやって、ターゲット製品の情報が入手できてきたら、その製品の販売企業、製造企業の情報の収集をする。これについては、上記のインターネットで得られる情報の範囲を越えて調査する必要が出てくる場合が多い。その場合には、企業調査の専門家に依頼するとか、そのような企業から政府に提出されている申請書であって、公開されているものを入手する。または、調査会社を用いてその企業に資料送付依頼を出して、資料を入手する。
  4. 自社特許の有効性調査をして、権利範囲をさらに正確に把握する。
  5. ターゲット企業のターゲット製品を購入して、特許権との関係を分析するための分解調査を実施する。そして、侵害鑑定を実施する。
  6. その後、警告状の送付、交渉、訴訟、和解交渉などと続く。
    権利行使の形態には、次のものがある。

第2節 補償金請求権の活用

米国発明者保護法(AIPA, American Inventors Protection Act of 1999)によって、米国特許法が改正された。米国特許出願の日から18ヶ月(優先権を主張した場合には、優先日から18ヶ月)で、特許出願の内容が公開される。これに伴なって、154条(d)に基づいて、補償金請求権が認められるようになった。
クレーム補正後も補償金請求権を確保するためには、補正クレームが米国特許庁によって公開されるように手続をしなければならない。 http://www2u.biglobe.ne.jp/~asahina/1999usa.htm


第3節 権利行使に関する法と判例

損倍賠償請求に関する時期的制限をチェックして、いつからいつまでの相手方の行為について損害賠償請求ができるのかを チェックしておく必要がある。どの時期まで遡って損害賠償請求ができるかは、次の事項によって影響を受ける。
  1. D1:特許発行の日
  2. D2:侵害に対する訴えまたは反訴の提起の日(特許法286条
  3. D3:侵害に対する訴えまたは反訴の提起の日の6年前の日
  4. D4:特許権者またはライセンシーによって実施されている場合には、特許表示要件を満たした特許表示がされている 場合における最初の特許表示の日(特許法287条
  5. D5:侵害警告の日
  6. D6:侵害行為の開始日
  7. D7:侵害行為の終了日
  8. D8:特許期間の終了日(出願の日から20年で終了するが、分割出願や先の出願の利益を受ける出願の場合 には、先の出願の出願日から20年以内となる。特許法154条(a)(2)))
    また、特許権維持のための年金納付が途絶えて権利が消滅した場合には、その消滅の日。
  9. D9:特許権者が侵害の事実を知った日または、当然に侵害の事実を知っているはずといえる状態となった日
  10. D10:D9の日から約6年を経過した日(ラッチェスの法理の適用のため)

上記のD1〜D10の前後関係によって、損害賠償請求の対象となる相手方の行為期間の開始日DSと終了日DE が決まります。この開始日DSと終了日DEについては、次のことが成り立ちます。
  1. 特許が特許権者またはライセンシーによって実施されていない場合もしくは方法のクレームのみからなる特許権 で特許表示の可能な実施物が存在しない場合:
    DSは、D1とD3とD6とD10の中の最も遅い日となる。
  2. 物のクレームを含む特許権であって、しかも特許権者およびライセンシーの実施製品に特許表示を適切にして いる場合:
    DSは、D1とD3とD4とD6とD10の中の最も遅い日となる。
  3. 前記1と2のどちらにも該当しない場合であって、侵害警告をした場合:
    DSは、D1とD3とD5とD6とD10の中の最も遅い日となる。
  4. 前記1と2のどちらにも該当しない場合であって、侵害警告をせず、侵害に対する訴えまたは反訴があった場合:
    DSは、D1とD2とD6とD10の中の最も遅い日となる。。
  5. DEは、D7とD8の中の最も早い日となる。
ジョージワシントン大学"Patent Enforcement"に関する菊間さんの受講ノート

第4節 特許侵害訴訟

  1. 特許権者は、自己の特許の侵害に対し、民事訴訟により救済を求めることができる。(281条)
  2. 米国における特許侵害訴訟は、民事訴訟法に従って行なわれる。
  3. 特許侵害訴訟の管轄権は、全米に94箇所ある連邦裁判所にある。第1審は、連邦地方裁判所に提訴する。原告(Plaintiff)によい裁判所(Court)へ訴状(Complaint)が提出され、受理(Filing)されることによって、始まる。裁判所に支払う手数料は訴額に関係なく、一定である。また、敗訴側が相手方の弁護士費用を支払う必要はない。
  4. 訴訟の最初は、訴答手続き(Pleadings)である。 訴状提出から証拠開示手続(Discovery)前に、当事者間で主張をやりとりするのである。すなわち、被告(Defendent)による答弁(Answer),抗弁(Affirmative Defence),反訴(Counter Complaint)などが行なわれる。それに対して、原告による反答弁(Counter Answer)が行なわれる。これに対して被告から各種申立て(Motion)、例えば却下(Dismiss),削除(Strike),管轄移送(Transfer)の申立てなどが行なわれ得る。これらに対して、原告による回答(Reply)が行なわれたり、原告による仮処分申立て(Motion for Preliminary Injunction)などが行なわれ得る。さらに、これに対して、被告からの回答(Reply)が行なわれ、裁判所によるヒアリング(Hearing)、決定(Order)へと進む。
  5. 次の段階は、証拠開示手続(Discovery)である。これは、訴答手続き(Pleadings)に続き、あるいは並行して始まる。ディスカバリーは法廷外で、当事者が相互に事件に関する情報を開示しあうことで、訴因に関する事実関係を明かにしようとするものである。これは、裁判所の許可無しに、当事者どちらからでも任意に行なう事ができるものである。
  6. ディスカバリーに要する期間は1〜3年程度であり、訴訟費用と訴訟期間全体の80%程度が、ディスカバリーに費やされる。
  7. ディスカバリーは通常は、次の4つの形式に分類される。
  8. ディスカバリーの対象と範囲は広い。ディスカバリーでは、必ずしも証拠能力のあるものだけでなく、他の証拠を見つけるためのものであっても、訴訟の係争物と関連する限り、認められる。ディスカバリーでの開示対象者は、相手方当事者のみでなく、場合によっては第三者に対してもなしえる。
  9. 秘匿特権がある情報は、ディスカバリーの対象外となる。秘匿特権の代表的なものに次のものがある。
  10. ディスカバリーの後は、法廷での事実審理(Trial)である。当事者のいずれかの請求があれば、陪審審理がなされ、そうでなければ、裁判所による審理となる。
  11. 事実審理は、次のようなステップを有する。
  12. 事実審理が終わると、判決(Judgement)が行なわれる。裁判所は、@陪審評決をそのまま判決として認めること、A評決無視の判決をすること、B再審理を命ずること、のどれかが可能である。
  13. 判決に不服な当事者は、判決の事件簿への登録後、10日以内に、説示の過誤,陪審評決が証拠に反することなどを理由に評決無視の判決を求めたり、再審理の申立てができる。
  14. 判決に不服な当事者は、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)に控訴できる。
  15. 連邦控訴裁判所の判決に不服な場合には、連邦最高裁に上告できる。


第5章 米国特許の価値評価の方法


特許権の金銭的価値は、「いくらでなら着目している特許権を購入するか?」という買い手側の論理を基本として決まる。特許権の金銭的価値評価のためのファクターは、次のとおりである。

その特許権の価値をPatent_Valueとすると、次の式で算出できる。

【算出式】

Patent_Value = m * r * y * v * c * e * g



特許権価値の算出ツールです。(JavaScriptをONにして使用してください)
m: 特許権の権利範囲に含まれる事業の年間売上げ高の推定値(million dollar) 半角で入力
r: その特許権の分野での特許ライセンスでの実施料率の推定値(%) 半角で入力

製品分野で大きく異なるが、だいたいは3%〜10%の範囲と考えられる。
y: その特許権が価値を維持すると思われる期間(単位: 年) 半角で入力

この期間の最大値は、特許権の残存期間となる
v: その特許権のつぶれにくさ(%) 半角で入力

(100%:再審査や十分な特許性調査によりつぶれないと結論されたもの、30%: 対応外国出願が公知文献をもとにつぶれているもの、10%: 審査に使用されていなかった有力な公知文献があるもの、0% : 確実につぶせる公知文献があるもの)
c: その特許権を使用すると思われる製品における、その特許権の寄与率の推定値(%) 半角で入力

  • 100%: 特許発明でもたらされた機能がなければ、対象製品の製品カテゴリーが変化するか、製品とは言えなくなるほどのパイオニア発明である場合
  • 50%: 特許発明でもたらされた機能がなくても製品カテゴリーが変化することはないが、市場競争力が全くなくなるほどの場合
  • 25%: 特許発明でもたらされた機能がなくても製品カテゴリーが変化することも、市場競争力が皆無になるほどではないが、特許発明をその製品の主要な複数の特徴機能の一つとしていた場合
e: その特許権の侵害立証の容易性の度合い(%) 半角で入力

(100% : 極めて容易、 50%: 少しの金銭的負担さえあれば短期間でできる。 20%: 技術的にも必要経費としても大きな負担をして初めて侵害立証できる)
g: その特許権を侵害することを避けるために他の技術を用いることの困難性の度合い(%) 半角で入力

(100% : 他の技術を用いることは不可能、 70%: 製品コストをあまり上げないで他の技術で代替できる。 20%: 他のもっと優れた技術に変更可能)



職務発明の対価に関する議論
第6章 日米の特許訴訟の重要判決のモニタリング


日本の知的財産権判決の検索サイト   、   米国の知的財産権判決の検索サイト
訴訟事件の名称訴訟に用いられた特許権事件の特徴と意義
オムロン対名古屋電機工業事件特許番号 第2077044号
特許番号 第2570239号
  • ソフトウェア特許についての日本での特許権侵害訴訟で原告が勝訴した初めてのケース
  • 装置クレームを用いた間接侵害論でもカバーされないプログラムとカバーされるプログラムの両方を記録した媒体に対しての差止めと損害賠償請求が認められている


日本で初めて、原告が勝訴判決を得たソフト特許である特許番号 第2077044号の内容を紹介する。
【公告番号】特公平7−119780   【公告日】平成7年(1995)12月20日
【発明の名称】実装基板検査位置生成装置および方法
【出願人】オムロン株式会社
【発明者】久野 敦司、 政木 俊道
【特許請求の範囲】
【請求項1】部品が実装された実装基板を検査するための検査位置を生成する実装基板検査位置生成装置であって、基板に対する前記実装される部品の装着位置を指定するための部品装着情報を記憶する第1の記憶手段と、部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報を記憶する第2の記憶手段と、前記第1の記憶手段に記憶される部品装着情報と前記第2の記憶手段に記憶される部品情報とから実装基板を検査するための検査位置を生成する検査位置生成手段とを備えることを特徴とする実装基板検査位置生成装置。
【請求項2】前記部品情報は、部品の電極の個数と電極の相対位置を用いて区分される部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含むものである特許請求の範囲第1項記載の実装基板検査位置生成装置。
【請求項3】部品が実装された実装基板を検査するための検査位置を生成する実装基板検査位置生成方法であって、基板に対する前記実装される部品の装着位置を指定するための部品装着情報と、部品の種類毎に検査対象となり得る場所の相対位置データを含む部品情報とから実装基板を検査するための検査位置を生成することを特徴とする実装基板検査位置生成方法。
Festo事件
  • 均等論の適用範囲をめぐって包帯禁反言の原則との関係での画期的な判決をCAFCが出していたことで注目された
  • 最高裁判決がCAFC判決を条件付でさしもどした


第7章 日米のIT分野の重要特許の抽出と紹介


特許番号(権利期間)請求項解説
US4698672
(1987年10月から2004年10月)
What is claimed is:   1. A method for processing digital signals, where the digital signals have first values, second values and other values, to reduce the amount of data utilized to represent the digital signals and to form statistically coded signals such that the more frequently occurring values of digital signals are represented by shorter code lengths and the less frequently occurring values of digital signals are represented by longer code lengths, comprising, forming first runlength code values representing the number of consecutive first values of said digital signals followed by said second value, forming second runlength code values representing the number of consecutive first values of said digital signals followed by one of said other values.JPEGによる画像圧縮をカバーする特許として権利者が権利主張を開始した。
米国公開特許公報番号20030028685A software architecture for a distributed computing system comprising: an application configured to handle requests submitted by remote devices over a network; and an application program interface to present functions used by the application to access network and computing resources of the distributed computing system. マイクロソフト社の特許出願であり、Webサービスの特許として注目されている
「ネットワークを経由して、遠隔デバイスから送信された要求を処理するように構成されるアプリケーションと、ネットワークと分散計算システムの計算資源をアクセスするためにアプリケーションによって使用される機能を提示するアプリケーションプログラムインタフェースとを備える分散計算システムのためのソフトウェアアーキテクチャ」である。

この請求項は、特開平11−265400号(1998年3月13日出願、1999年9月28日公開)に類似していると思う。


第8章 米国特許に関するツール


8.1 米国特許に関する権利期間の算出

米国特許の権利期間(154条
出願日権利期間
1995年6月7日以前の出願登録日から17年間
1995年6月8日以降の出願最先の出願日から20年まで(特許取得手続に3年以上がかかった一定の場合には、5年を限度とする権利期間延長の例外あり)

最先の出願日とは: 対象の特許出願の出願日、120条121条の継続出願および365条(c)の継続国際出願の中の最先の出願日である。
1995年6月8日の時点で有効な特許、ならびに、この日より前の出願に関する特許については、発行から17年間と出願から20年間とのうち、いずれか長いほうが特許の権利期間として適用される。(154条(c)(1))


注)
@ (根拠: Changes to Implement 20-Year Patent Term and Provisional Applications; 法案番号:3510-16)
A 再発行特許(Reissued patent)の権利期間は、「原特許の期間が消滅していない範囲の期間に対して付与される」とされている。したがって、原特許に関する上表で算出された権利期間を越えることはない。(251条



8.2 米国判例検索ツール
U.S. Court of Appeals, Federal Circuit (CAFC)
United States Court of Appeals for the Federal Circuit
Supreme Court Decision
Supreme Court Decision 1937-1975


8.3 米国特許検索ツール
United States Patent and Trademark Office Search Site

第9章 ソフトウェア知的財産権の実務



第10章 ソフトウェア知的財産権およびビジネスモデル特許についてのリンク集


1.ソフトウェア知的財産権 2.ビジネスモデル特許,経営戦略
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