26. EDR電子化辞書を特許制度に組み込むべきです

私は、特許庁から自分の基本発明と言えるものについて、基本特許として認めても らった体験と、 そうでない体験の両方を持っています。特公平7-119780 では、基本特許といえる請 求項を特許 査定してもらいました。そして、このソフト特許を用いた特許権侵害訴訟で勝訴しま したので、この ケースでは特許庁の対応には満足しています。 しかし、特許第3275311号では、技術思想からみると請求項にいれるべきでない不要 な限定を することになりました。
共通して言えることは、拒絶理由は示すが、どのように補正すれば特許するかという 助言は審査官 は文書では出さないということです。審査官面接の場や、代理人である弁理士への電 話では、この ように補正すれば特許査定するつもりだということを、審査官が述べることは多くあ ります。 請求項が不明確なので明確化してくれとか、もう少し限定要件を追加してくれという ことです。 書面では、このようにすれば特許査定にするということを審査官が書けないのは、審 査官が出願 人に発する書面は、「拒絶理由通知」、「拒絶査定謄本」、「特許査定謄本」のどれ かであるから だと考えます。特許法は、制度としては、このように補正すれば特許するということ を審査官が出願人 に伝えるということを予定していないのです。そのような中で、今までは運用で、審 査官からの電話連絡 で、「このようにすれば特許する」ということを出願人に伝えていました。 審査官が、公知技術に基づいて請求項に最低限の限定をさせることは、出願人からも 歓迎すべき ことです。なぜなら、特許権になった後で、権利範囲に公知技術が含まれていること が判明した場合、 特許権侵害訴訟において、裁判官は、ともすると実施例に近い範囲まで限定して権利 範囲を解釈して しまうためです。しかし、審査官が過度の限定をさせることは、基本特許となるべき 発明を、改良特許 レベルの特許にしてしまう不適切な行為です。 この過度の限定は、このような限定をすれば特許査定するという審査官からの電話 に、代理人と出願 人が安易に応じてしまった場合に発生します。拒絶査定されるよりはましだと思って のことです。 要は、審査官は公知技術に基づいて、特許性を確保するのに必要な最低限の限定まで しか、出願人に 求めないようにすべきであるということです。 しかし、ここに実務上の困難性があります。その原因は、用語概念の間の上位と下位 の関係を厳密に 定義したシソーラスが特許庁と出願人の間の共通基盤としては存在していないため に、概念の広狭に ついての認識が特許庁と出願人の間でずれてしまうためです。 特許権は言葉で記述された請求項に対して与えられるのに、用語概念の共通基盤が存 在しないという ことが、特許システムにおける根本的な問題点です。 せっかく、日本語の概念について国費でEDR電子化辞書が作成され、用語概念間の 上位下位の関係 を含めた膨大なデータが体系的に利用可能にまとめられているのに、これを特許庁で の審査に利用しな い手はないと思います。EDR電子化辞書については、独立行政法人 通信総合研究 所の下記サイトを ご覧ください。
http://www.jsa.co.jp/EDR/J_index.html

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