27. 請求項記述言語の拓く知財立国のビジョン

20年以内に、「請求項を作成することが、製品設計行為および製品生産行為であると いう時代が来る」と予想します。 このような姿を「請求項駆動型CADシステム」と名付けます。 これこそが、究極の知財立国の姿であると考えます。なぜならば、良い特許を出願す ることが、すなわち良い製品 を作ることに直結しており、製品は常に特許出願と連携しているためです。 現状を考えると、あまりにも飛んだ考えですが、時代はその方向に向かって邁進して います。 その将来ビジョンを述べます。
まず、請求項および実施の形態の記載が人間が読むためだけのものから、コンピュー タも読むものへと変貌を遂げ 、出願明細書に記載の技術思想が、ブロックダイアグラムやフローチャートなどに自 動変換されるようになります。 または、最初から請求項をブロックダイアグラムやフローチャートとして表現しても 良いことになります。
これを実現するためには、請求項記述言語を開発しなければなりません。
請求項記述言語は、人間が読んで理解できるという特性を維持したまま、コンピュー タも読んで理解できる ということを実現するために、さまざまな約束事を請求項の記載形式に設定したもの になります。
たとえば、請求項の構成要件の間の区切り記号の制定、構成要件ごとのラベル付け形 式の制定、用いる用語の意味 を概念辞書に記載の定義とリンクさせること、構成要件の記載と実施の形態の間のリ ンクを設定すること、などがすぐ に思い浮かぶことです。
請求項の記載事項をブロックダイアグラムなどに自動変換できるようにするだけでな く、実施の形態に記載した技術内 容も、次のように変貌させていきます。すなわち、請求項に記載の技術思想を具体的 なシステムに展開する上で、発明 者が最良と思われる実施の形態を実現するために発明者が選択したCAD部品モ ジュールデータとのリンクを記載する のです。このようなリンクの記載が実施の形態になければ、コンピュータが自動的に 適切と思われるCAD部品モジュー ルを請求項の構成要件に対して与えていきます。
このようにして、コンピュータは、自動的に実施の形態に記載のシステムの設計を示 すCADデータを生成していきます。 CADデータが作成されたら、それを用いて生産を行なうことも可能となります。 これによって、請求項を記載することが製品設計行為および製品生産行為であるとい うことになります。
このような将来ビジョンが実現できれば、請求項は抽象度の高いCADデータである ということになります。 その場合、特許出願件数が膨大な日本は、設計や生産に直接に役立つ膨大な知的資産 を持つことになりますので、日本 の産業競争力は飛躍的に強化されます。言わば、日本国が巨大な頭脳を持ったことに なります。
また、請求項の記載が、さまざまな企業の製品を示すCADデータを結びつけること になりますので、取引の相手先が、 請求項の記載を媒介に自動的に探索されるということにもなります。
さらには、特許出願の審査の大きな部分が自動化されることにもつながります。なぜ なら、請求項がコンピュータの 理解可能な形態に変換されているので、公知文献としての公開特許公報の技術内容と の意味的比較をコンピュータ が行なえるようになるためです。他にもさまざまな応用が飛躍的にすすむでしょう。 これらの方向に向かう第1歩は、コンピュータと人間の双方にとって理解しやすい請 求項記述言語を制定することです。
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