167.合理的な方法論の落とし穴

知財業務に限らず、成果をあげるため、失敗をしないため、効率よく物事を成し遂げるためなどを目的として さまざまな合理的な方法論が開発されている。 しかし、合理的な方法論を学んで物事を達成しようとする際に、次のような落とし穴に、陥ってしまうことが ある。

1. 無責任の落とし穴
最も合理的な方法を実行して失敗したのだから、誰がやっても失敗したはずだ、だから実行した者にも、 実行を監督した者にも支援した者にも失敗の責任は無いという論理で、無責任体制になりがちである。
外部の専門家の指導や判断結果をもとにして行動して失敗した場合にも同様の無責任体制が発生 しがちである。
これには、上司の指示に従うことにだけ集中し、実行の結果には無関心であり、責任をもたないし成功のための工夫も しないという態度に共通するものがある。

2. 方法論の誤解や不完全な適用による失敗の落とし穴
方法論を構成する重要な用語の概念をきちんと理解せずに、単なるプレゼンテーション用のキーワードとして 用いていると、全く不合理な行動をしてしまい、しかもそれが不合理な行動であるということにも気付かない という状態になってしまう。
物事を本気で考察せず、考察や調査の労力を惜しんで、簡単に方法論を仕入れてきて苦労せずにそれを実行 しようとすると、このような状態になってしまうことが多い。

3. 執念や情熱の欠如の落とし穴
プロジェクトや事業に関係する事情は、2つとして同じものは無い。合理的な方法論を適用しようとしても 適用しきれない事態が必ず発生する。成功するか失敗するかは、やってみないとわからないというような事項 や、失敗確率の方が高いと思える事項も、いくら綿密に計画を設定していても発生する。 そのような場合、執念や情熱があれば、アイデアを搾り出してそのような事態を突破しようとするが、単に 合理的な方法論を適用し、何らかの指標を向上させることだけを考えていたのでは、そのような突破力は 生まれない。悪くすると、執念や情熱で難局を突破しようとする者の妨害をすることにもなる。

合理性や計画性は大事であるが、物事を達成するためにはそれだけでは不足である。執念と情熱と工夫が無いと 想定外の困難を乗り越えて目的を達成することは出来ない。
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