166.知財業務のための文書保存と人材の条件

知財業務では、将来において何らかの事実を立証する必要性を予測して、文書を一定期間保管することが 行なわれる。
例えば、発明日の立証、発明者の立証、著作日の立証、機密情報開示の立証、侵害回避のための調査を 実行したことの立証、譲渡対価の妥当性の立証、契約締結の立証、契約更新の立証など多岐にわたる。

しかし、いくら文書を保管していても、文書が次のような状態だとなかなか立証に活用できない。
(1)文書に日付け、作成者の所属と氏名が記載されていない。
(2)表現があいまいであったり、用語が不適切であって、その文書が何を述べているのか不明確である。
(3)文書がどこに保管されているのか不明であり、見付からない。
(4)文書が保管されている場所はわかるのだが、膨大な量の文書があり、求めている情報にたどりつくのに どれだけの文書を読まねばならないかわからないし、求めている情報が記載されているかどうかもわからない。
(5)鉛筆で記載されているなどのため、文書を改竄していないと明確に主張できないような状態である。

もし、文書が上記の条件にあてはまるようなものばかりではなく、何らかの立証に活用できるものが含まれ ていたり、タイムスタンプを押されていたり、公証人による確定日付を得ているような文書が適切に分類整理 されて保管されていても、その文書を活用する人の側に次のような問題があれば、せっかく保管された 文書も活用されることはなくなる。
(1)労力を惜しみ、文書の探索を実行しようとしない。
(2)文書による立証をして相手方に強い主張をすることを避けようとする。
(3)複数の文書に記載されている内容をつなぎ合わせて、事実を立証しようとする意欲や能力が欠けている。
(4)文書に記載されている内容の法的な意味や事業上の重要性が認識できないので、重要な証拠となる文書 を見逃す。

知財業務は文書を中心に行なわれる。そして、知財権の活用やリスク対策は文書を中心とした証拠に基づいて行なわれるので、 文書保存の適正化と、文書を活用する人材の育成と配置は大変に重要な課題である。

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