146.過剰管理は知的貧困を招き、PDCAサイクルを知的貧鈍サイクルに変える

イノベーションは、次のような場合に発生します。
@ 従来存在しなかった機能を実現する技術が創造されて、その機能をもとに様々な アプリケーションが実現できる場合
A 従来から存在していた機能を大変にローコストに実現する技術が創造されて、そ れが新しい市場を創造する場合
B 従来の技術で実現された従来の機能を、新しい方法や形態で顧客に提供すること で新しい市場を創造する場合

イノベーションの実現のためには、イノベーション実現の方向を定めるための未来 を見る想像力が不可欠です。
想像した未来を実現するために懸命に努力して始めてイノベーションが実現できま す。

未来を見る想像力は、現在の事実を整理して分析して評価するだけでは出てきませ ん。発想の柔軟性と飛躍が必要です。

知財情報の中には、商品としては実現されていない装置やシステムなどに関する発 明も豊富に記載されています。これらは1年6ヶ月以上前に誰かが想像した未来に 関する記述ですので、誰かがどんなイノベーションを世の中にこれから引き起こそ うとしているかを、知財情報を分析して、その断片を、ある程度は知ることができ ます。
他人が想像したイノベーションのイメージを知るだけではなく、自分自身も新しい イノベーションをおこそうとするならば、知財情報の分析だけでは不足ですし、知 財価値評価をするだけでは無理です。

PDCAサイクルを素早く回転させることで、様々な問題が解決されるとしてPDCAサイ クルを個人のレベルでも組織のレベルでも早く高密度に実行することが増えていま す。競争原理もPDCAサイクルの一種です。Cの段階を評価会議で行なうか、市場競争 で行なうかの相違です。
しかし、Pの段階に想像力に基づいた新しいアイデアが含まれていないと、いくら DCAを行なってもイノベーションは生じません。(参考サイト1)

イノベーションに向かうことの出来るアイデアを含んだPの無いまま、頻繁に会議を 行ない、計画書を作成しなおし、さらに計画書に基づいた業務を実行してみて も、イノベーションに向かいません。2階に上がる階段を発見することが無けれ ば、いくら歩き回っても1階の床の上をうろうろするだけだと思います。

過剰管理で心理的な余裕や時間的な余裕が無くなって来たり、想像を軽視する風潮 が蔓延してくると、常識的な計画のもとで、報告書作成、会議実施、計画書の改訂 が高頻度に繰り返されるだけとなり、仕事の付加価値が低下します。その結果、付 加価値向上を目指してさらに高速にPDCAサイクルをまわそうとすると、付加価値を もたらす源泉であるアイデアが無くなってしまい、働けど働けどイノベーションゼ ロというサイクル(貧すれば鈍する という知的貧鈍サイクル)に陥ります。

知財部門のメンバーは、知的財産権法を勉強してきたために法律家タイプの発想と なってしまい、どうしても飛躍した発想を避け、常識的な発想の計画に基づいた前 記の知的貧鈍サイクルに陥ることが増えます。
企業におけるイノベーション実現に知財部門が貢献するためには、知財部門が開発 部門や企画部門のメンバーの頭脳のマッサージ師となって、彼らの発想をや柔らか くして広げてあげて、一緒に知的貧鈍サイクルから抜け出すことが重要だと思います。

知財業務には、発明家のように豊かな発想力が必要な業務、法律家のように厳密な 手続きと法的判断力が必要な業務、事業家のように事業の成功要因に基づいた価値 評価とバランスを必要とする業務が入り組んで存在しています。
考えてみれば、この3つの種類の能力は、PDCAサイクルを実行してイノベーション を実現するために必要な能力を全て含んでいると思います。
知財業務は因果な商売ではありますが、面白いものだという原因はこのあたりにあ りそうです。

【参考サイト】
1. PDCAサイクル
2. 知財立国の基盤である人材の問題発見能力と問題解決能力を蝕むマニュアル化と過剰管理

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