145.特許権活用の新しい形:特許権併用型ベンチャー投資

大変に価値のある基本特許を保持していながら、それを活用する能力のある知財部門を持たない企業や、 大企業病になってチャンレンジ精神を失い創意工夫と熱意とリスクへの挑戦が必要な特許権活用業務を せず、特許権の各種の件数分布グラフを作成するだけの官僚化した知財部門を持つ企業が多い思われる。
このようになってしまうと、いくら素晴らしい基本特許を保有していても特許権の活用が出来ず、単に特許権を取得しては特許権を放棄することを繰り返すだけになる。
莫大な金銭的価値がある基本特許を放棄することは、株主の利益を損なうことにもつながるので、何とか 社外での利益創出の道を探ると言うことも必要になる。
基本特許を用いた利益創出の方法としては、オンライン知財オークション(参考サイト1,2)という ものもあるが、ベンチャー企業への投資をする投資ファンドとの連携という方法も考えられる。 下表にその方法を示す。

名称 ライセンス等の形態 特許権者の収入 他社による特許権侵害への対応 投資ファンド形成のアピールポイント ベンチャー企業の成長後の対処
タイプ1 独占的通常実施権の設定 通常の実施料率でのランニングロイヤリティと第三者からの実施料収入の一部 投資ファンドの資金をもとに特許権者から委託を受けた代理人が権利行使し、侵害者から回収した 損害賠償金や実施料は代理人費用を差し引き、投資ファンドと特許権者にて分配する ベンチャー企業の技術、事業と経営者の有望性、ライセンス付与する特許権のパワー、 特許権を行使する代理人のパワー、投資ファンドの体制の信頼性をアピールして、投資家からの投資を集めて投資ファンドを形成 する 株式上場,特許権のライセンスを与えた企業による買収,ベンチャー企業が特許権を買取る、など
タイプ2 専用実施権の設定 通常の実施料率でのランニングロイヤリティとイニシャルペイメントと第三者からの実施料収入の一部 投資ファンドの資金をもとにベンチャー企業から委託を受けた代理人が権利行使し、侵害者から回収した 損害賠償金や実施料は代理人費用を差し引き、投資ファンドとベンチャー企業にて分配する 同上 株式上場,特許権のライセンスを与えた企業による買収,ベンチャー企業が特許権を買取る、など
タイプ3 特許権の譲渡 譲渡対価のみ 投資ファンドの資金をもとにベンチャー企業から委託を受けた代理人が権利行使し、侵害者から回収した 損害賠償金や実施料は代理人費用を差し引き、投資ファンドとベンチャー企業にて分配する 同上 株式上場など

【参考サイト】
1.知財オークション あなたもトライ!?おもしろ知財ビジネス
2.日本初、知財オークションサイト通じて米企業にソフト特許売却

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