131. 知財を狙ってのM&Aや、知財が原因の株価高騰が本格化する時代が2007年に始まる

日本では知財立国政策がとられて、特許権の保護のための法制度は大変に充実してきた。特許権の価値は、 その特許権の保有者によって大きく変わる。1兆円の市場をカバーする特許権を保有していても、そのような 市場があることを探知できる情報パワーがなかったり、重要な基本特許を保有していると気付いても活用する 資金や人材などの組織パワーがなければ、価値ある特許権を単に死蔵してしまうことになる。
また、有望な事業分野の先駆者であり、その事業分野で他社に先駆けた発明をして基本特許を取得しても、 その事業分野が成長期を迎える前に、事業撤退してしまい基本特許だけが残っていて、自社事業への貢献 のチャンスもなくなっているという場合もある。
2007年5月には、三角合併によるM&Aが解禁されて、外国企業による日本企業買収が本格化する。(参考サイト2参照)
そうすると、相手企業の経営資源(技術、設備、知財、顧客、販売網など)を狙っての買収活動が活発化する。
その際、買取対象としてターゲットにされた企業の株価が、買取側からみて割安であると買収されるリスクが 高くなる。買取側が少ない投資で大きな経営資源を獲得できるからである。
株価が割安かどうかの主要な判断指標には、次の式で定義されるPBRがある。PBRが1未満であると割安 である。

PBR(Price Book-Value Ratio:株価純資産倍率)=株価÷1株純資産(BPS)
BPS(Book-value Per Share:1株純資産)=純資産 ÷発行済み株式数

すなわち、保有している資産の割に株価が低い企業が買取り対象として狙われやすいということである。
この資産の中に、本来は知的財産権の有する価値も含まれるべきであるのだが、ほとんどの企業では、資産の 中には知的財産権の価値は計上されていないか、計上していても、根拠のある数値ではないと考える。
そのため、知的財産権を正当に評価して価値を計上しておれば高い株価を実現でき、大きな時価総額を実現でき、 、企業買収する側から見た買取コストを増大させたり、逆に相手企業に対する攻撃に用意できる資金を増大 させる事ができるにもかかわらず、それが実現できていない。
そして、自分が保有している物凄く価値ある特許権に気付かず安い株価のまま、簡単にM&Aされてしまうことにもなる。
現実に、日本企業の中にさえ、知財の獲得を目的としたM&Aを考えているものも現れている。(参考サイト1)

特許権には、1件の特許であっても1兆円や10兆円の市場をカバーし、その市場を制覇させるパワーを特許権者に 与えるものがある。
したがって、自社の特許権は自社の事業発展のための補助手段であるという認識で、自社の特許権の価値や その活用に関心を持たないでいると、企業買収の危険をもたらす。
自社の特許権の価値を正確に把握するためには、自社の保有する特許の中にある基本特許を抽出し、その 基本特許の請求項を分析して、その請求項でカバーされる技術のもたらす製品や市場を予測することが必要である。
基本特許を抽出せず、多数の特許を群として価値評価しようとすると、請求項の分析などが行なえず、 価値ある特許権の把握ができない。
ポイントは、基本特許を見抜く眼と、基本特許のカバーする技術が実現する商品や市場の広がりを認識できる ようにすることである。
【参考サイト】
(1)  資料1 松下電器とM&A−水野(譲)委員提出資料 (PDF)
     第5回 平成17年 M&A研究会議事要旨
(2) 新たなる「M&A時代」の到来

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