95. 知的創作物と知的財産権

知的財産権は、知的創作物についての権利であると言える。知的創作物の中には、知識情報、発明の実施体と著作物がある。 現在の法制度では全ての種類の知的創作物については、知的財産権が設定できるようにはなっていない。

(1)認識主体である人間から独立に客観的に存在している実体の機能や性能と、その実体の構造またはプロセスの 因果関係についての技術的思想。(発明)
発明の創作過程に注目して発明を定義すると、次のようにも言える。
発明とは、脳の有する自己組織化機能が作動することで、目的機能をシミュレーションするために脳内に発生する 一時的な情報処理システムを、脳内の他の部分が認識することで、目的機能の実現方法を言語表現したものである。
(2)認識主体である人間から独立に客観的に存在している実体の表面構造と、その表面構造を視覚で観測した人間 の脳内に発生させる美感との因果関係についての美的思想
(3)認識主体である人間が標識として用いる文字,図形,立体構造を認識対象とし、それらを観測した人間が認識 対象を装着されたものについて、脳内に想起させる評価との因果関係についての思想。
(4)認識主体である人間が脳内で発生させた情報を、他の人間に伝達可能に、文字,図形,立体構造,音響により 表現した知的創造物。(著作物)
(5)アクチュエータの時空間分布の知識情報
(6)センサーの時空間分布の知識情報
(7)ソフトウェアの所在の知識情報
(8)機能ごとのソフトウェアの識別符号の知識情報
〈9〉人間の行動や判断基準を規定したルールの知識情報(法律)
(10)地球上の実体の所在に関する知識情報
(11)サイバー空間におけるオブジェクトの所在に関する知識情報
(12)サイバー空間におけるオブジェクトの組み合わせと、その組み合わせによって発生できる機能の関係の知識情報



知識情報は、上記のように人間が認識する実空間上の実体、人間、サイバー空間上でのオブジェクトに作用して、 価値を発生させるための情報となる。
知識情報は、人間が創作して人間が活用するものから、人間またはコンピュータが創作して人間またはコンピュータが 活用するものに変化していっている。自己組織システム、データマイニング、シミュレーション、学習機能、 組み合わせ最適化探索機能などによって、知識情報がコンピュータによって創作されるようになっている。
ユビキタスネットワーク、Webサービス、グリッドコンピューティング、分散コンピューティングなどにおいて、 知識情報が、コンピュータによって活用されるようになりつつある。
したがって、知的財産権は、人間が創作する知的創作物のみを保護するものから、コンピュータが創作する知的創作物 (知識情報を含む)をも保護するものに進化させねばならない。

【参考文献】ナレッジサイエンス
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