46. パテントポートフォリオマネージメントの役割

特許を束として管理し、しかも、請求項の詳細な分析や自社製品および他社製品を請 求項がカバーするかどうかというコストと労力のかかる分析なしに、特許をグループ 分けしたり、一応の価値を算出するパテントポートフォリオマネージメントが、は やっている。
確かに、パテントポートフォリオマネージメントによって、どの分野では自社の特許 パワーが強そうかがわかったり、どの発明者がどの技術分野で活発に発明をしている かなどのことは、わかってくる。 しかし、実際の権利行使をしようとすると、具体的に特定の特許権の特定の請求項と 特定の他社製品の比較を行なったり、その他社製品の売上高の推定を行わなければな らない。
また、将来の有望分野を予測し、その分野に計画的に発明をして、効率的に基本特許 を取得していくということもパテントポートフォリオマネージメントでは難しい。 パテントポートフォリオマネージメントの価値は、特許業務の選択と集中を効率的に 実行できるようにしてくれて、重要な発明の特許権を取得することや、特許権を事業 に活用すること、将来技術を予測して技術戦略に反映することなどに、多くの時間を 持てるようにしてくれることにあると考える。 また、経営層に自社の特許管理の状況を統計的に説明するのにも、パテントポート フォリオマネージメントは役立つ。
現在のパテントポートフォリオマネージメントが請求項の分析にまで踏み込めない大 きな原因に、請求項の意味解析ができないという技術上の問題がある。現在の技術で 可能なのは、請求項に含まれるキーワードや、その特許に付与されたIPCなどをも とに請求項を分類し、同一分類や類似分類の特許との間で出願日の前後関係をもと に、得点を付与するという程度である。 このようなパテントポートフォリオマネージメントを行なうためには、例えば特許第 3333998号に記載の方法が必要となる。
もし、請求項記述言語が開発され、請求項の意味を簡単に自動解析でき、請求項間の 包含関係が自動的に判明するようになればパテントポートフォリオマネージメントで 提供できるサービスはさらに高度化、高精度化して、戦略業務にも活用できるように なる。企業の特許戦略および日本の知財立国のためにも、請求項記述言語の開発が望 まれる。
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