386. 「新産業構造ビジョン」骨子(案)(2017年5月19日現在)について

注) 本論考のPDFファイル

経済産業省の産業構造審議会総会(第20回)の資料が、本日(2017年5月19日)、公開された。
http://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/020_haifu.html
http://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/pdf/020_03_00.pdf

サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合した世界を作ること、そのために日本の強みであるリアルデータについて、 リアルデータプラットフォームを作ることを戦略の柱にしている。

サイバー空間に必要とする情報には時々刻々と内容が変化していくリアルデータと、内容が変化しないか変化が遅い背景データがある。
リアルデータには、@物理状態情報(センシングデータ)、A権利情報、Bマネー情報、C法律や契約などのルール情報、D各種操作の主体や客体を特定するIDおよび属性情報、 E製品やサービスの設計情報や計画情報がある。

リアルデータプラットフォーム(センシングデータ流通市場も部品として含む)は、前記@〜Eのリアルデータをリアルタイムに高速に組み合わせて、フィジカル空間で人間の 介在のもとで実行していたのでは到達できないような最適な組み合わせを低コストに創造したり、最適なパラメータ調整のもとで連携した情報システムを動的に形成する。

この情報システムの動的形成を、Senseek(参考サイト5)をセンシングデータ以外にも拡張したデータフロー制御指令を用いて、サイバー空間内に実現できる。

データフロー制御指令は、サイバー空間内の各種存在の間の結合を動的に形成する指令である。
多数のデータフロー制御指令から成る指令群が、サイバー空間内に情報システム(例:AIネットワーク)を動的に形成するのである。
データフロー制御指令の中に、実行条件を含ませておけば、その実行条件が成立したタイミングでデータフローが実現される。実行条件として、実行すべき時刻を定数 や関数で記述しても良いし、トリガーイベントの発生を条件としても良い。データフロー制御指令の設定次第で、大変に高度な処理を実行する情報システムを動的に実現できる。



もう少し具体的に説明すると、次のようになる。
人間またはAIまたはアプリケーションシステムが、まずはE製品やサービスの設計情報や計画情報を用いて、フィジカル空間で実行すべきアクションを決定しようとする。(参考サイト1,2を参照)
このアクションの決定にあたっては、Dフィジカル空間での各種操作の主体や客体を特定するIDおよび属性情報を用いてアクションの主体と客体を決定しなければならないし、 そのアクションが、C法律や契約などのルール情報に適合するかどうかのチェックも必要となる。
さらには、そのアクションの主体と客体の組み合わせを可能とする権利が主体に存在しているかどうかや、そのアクションの実行に必要なデータの流れとマネーの流れを設定できるかどうかや、 マネーが存在するかどうかをチェックする。
これらのチェックの大部分は、サイバー空間において売り注文を出すAIと買い注文を出すAIが、それぞれ独自に自己チェックして、チェックに合格した内容だけを注文という形で データ流通市場に提供する。ただし、売り注文と買い注文の組み合わせが決まって初めてチェックできる事項についてのチェックは、データ流通市場のAIが担当する。
すなわち、リアルデータの売り注文が表現する売る対象のデータの技術的属性と取引条件が、買い注文が表現する買いたいデータの技術的属性と取引条件に合致するかどうかのチェックは、データ 流通市場のAIが、人間の介在なしに同時並列的に行なうのである。
チェックの結果、解決すべき問題(マッチングしない売り注文や、マッチングしない買い注文の発生)が抽出されたならば、売り側のAIと買い側のAIは、実行したいアクション を維持したまま売り注文や買い注文を構成するメタデータの一部を変更するか、実行したいアクション自身を変更するなどをして、問題解決策を練る。
マッチングした売り注文と買い注文のペアの内容に基づいて、データフロー制御指令がデータ流通市場のAIから売り注文を出した側のAIに対して発行される。
これらの一連の動作を、高速に何度も行なって、関係する資源を最適に組み合わせ、最適なパラメータ調整のもとで連携した情報システムを、リアルデータプラットフォームを 用いて、サイバー空間中に一瞬で形成する。
このようにしてサイバー空間中に形成された情報システムが、フィジカル空間を高速に最適制御するのである。

実は、工場の製造ラインという限定された範囲については、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)は、数十年前からサイバーフィジカルシステムを実現していた。

(上図の出典: https://web.archive.org/web/20150322033906/http://www.omron-ap.com/service_support/technical_guide/plc/index.asp )

上図で言うと、Inside PLC(CPU Unit)がサイバー空間であり、PLCの外部がフィジカル空間である。そして、サイバー空間とフィジカル空間を結合するものが、Basic I/O unitおよび Sensor,Switch,Actuator etc.である。
Inside PLC(CPU Unit)内のCommon Processing(Self-Diagnosis)は、自己診断などの処理であり、前記したリアルデータプラットフォームが、A権利情報、Bマネー情報、C法律や契約などのルール情報をもとに、 権利の観点、マネーの観点、ルールの観点からチェックをして最適な行動を実現しようとする機能に対応する。
Execute Programは、センサーやスイッチから得られる値が所定の条件を満足していた場合に、アクチュエータを起動するリレーをONさせる命令の集合となっている。 これは、前記したリアルデータプラットフォームが、@物理状態情報(センシングデータ)の属性情報が所定条件を満足していた場合に、E製品やサービスの設計情報や計画情報にセンシングデータを 与えるためのデータフロー制御指令を発することに対応する。
PLCでは、PLCサイクルごとに、I/O Refreshにてフィジカル空間の物理状態情報(センシングデータ)を取り込んで、サイバー空間であるInside PLC(CPU Unit)内で処理する。
処理結果としてフィジカル空間に対するアクションを決定し、次のI/O Refreshにてフィジカル空間に対する作用をBasic I/O unitおよびSwitch,Actuator etc.を用いて、与えている。

新産業構造ビジョンでいう「サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合した世界を作る」とは、工場の製造ライン制御に用いられているPLCの仕組みを、IoTを用いて社会 全体に拡大するという事である。

これは、サイバー空間中に形成された情報システムが、フィジカル空間を高速に最適制御するというイメージである。 すなわち、そのイメージが、ブルースリーの動きである。
(サイバー空間)・(データフロー制御指令の群)・(フィジカル空間)の充実があって始めて可能となる「先の先」(参考サイト4)という動きである。
https://www.youtube.com/watch?v=IJGndrjP0i8&feature=youtu.be&t=77

フィジカル空間内の存在の最適な組み合わせと連携動作を、サイバー空間に動的に形成した情報システムの制御のもとで、フィジカル空間に、現実化させるのである。
これを人間の介在なしに高速に実行するためには、サイバー空間での処理の大部分を人工知能に任せることが必要となる。
人工知能が作った価値の収益を人間が得られるような枠組みのもとで、人工知能に法人格を与えてAI法人とすることが必要となる。(参考サイト3)

日本国全体を1つの生物に例えるならば、日本国はブルース・リーのように、体も動きも最適化されて超高速動作する「超高速最適化システム」になるべきである。

【参考サイト】
1.特許第3312141号
http://www.patentisland.com/Commandbreakdown.pdf
2.特許第3800547号
http://www.patentisland.com/jpb_0003800547.pdf
3.IoT産業革命のために必要な、法人格を持ったAI
http://www.patentisland.co.jp/memo371.pdf
4.〜「三つの先」〜
http://www5b.biglobe.ne.jp/~karate/html/sub_html.htm/study-karate/study_3tunosen.htm
5.Senseek
http://www.patentisland.com/JPB_0005445722.pdf


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