352. Internet of Thingsのレイヤーの新たな産業と社会について

Internet of Things(IoT)は、単にさまざまなモノがインターネットに接続されるというだけのものではない。
IoTは、地球上の現実空間を最適制御する壮大な分散型地球コントローラを形成している。この分散型地球コントローラは膨大な個数のアプリケーションシステムから構成される。
現実空間の状態を情報空間に写像することで格段に増した自由度によって得られる価値ある情報を、現実空間に対する価値ある作用にするために、 現実空間でのこれまでの仕組みを変革していくことが必要となっていることを認識する必要がある。すなわち、イノベーションが必要とされるのである。

それは、つきつめていくと、資本と労働が産業を支配しているという大前提で動いていた社会を大きく変えてしまうパワーを持つ。
すなわち、情報空間での新たな情報構造やそれらに対する権利が産業を支配するというレイヤーが勃興してきているのである。

なぜならば、あらゆる分野の産業での価値創造の主要部分がソフトウェア化してきたことと、ソフトウェアの実現が容易になってきたために、多くの産業分野において 起業コストが劇的に低下してきたためである。

上記図の出典: http://jp.fujitsu.com/vision/2014/chapter1/01/

この思想を次のように簡単に説明する。

1. データが価値を持つのは、そのデータが現実空間での何らかの存在物や現象と因果関係を有している場合である。

2. 現実空間の存在物や現象は、さまざまな粒度や様々な軸で把握できる多面性を有している。例えば、時間軸上では 1日単位の変化でとらえるのと、年単位の変化でとらえるのでは大きな認識の相違ができる。

3. さまざまな事業は、前記の因果関係の一部を用いて、現実空間の何らかの領域に対して何らかの粒度にて、 何らかの観点での良い状態を形成して対価を得る活動である。

4. データも、現実空間の存在物も現象も、誰かの所有や管理がされているし、各種の法制度や慣習による規制も存在する。
そして、その所有や管理や規制は、前記の2でいう「さまざまな粒度やさまざまな軸」ではなく、既存の「特定の少数の粒度や特定の少数の軸」に基づいている。

5. インターネットにさまざまな存在物が結合したIoTの世界では、現実空間の写像が情報空間に形成される。
この情報空間では、さまざまな粒度と様々な軸で世界を把握したり、制御結果をシミュレーションすることが可能となってきた。

6. したがって、特にIoTの世界では、これまでにない新たな観点やこれまでにない新たな粒度で現実空間の領域に着目した問題解決アイデアを生み出せる。
すなわち、IoTの世界では問題解決アイデアを現実化するためのデータを収集して処理して、その結果を現実空間に対する新たな価値として提供する事業を創造 しやすくなっている。それは、まさにデータ駆動型イノベーションとなる。

7. しかし、このデータ駆動型イノベーションに対する障壁となるものが、前記の4の状況である。
すなわち、前記の5でいう情報空間の自由な活動と、情報空間の活動成果の現実空間への適用を、前記4の状況が阻害しているのである。

8. すなわち、前記4でいう、既存の「特定の少数の粒度や特定の少数の軸」に基づいた所有や管理や規制が、IoTの世界が開こうとしている データ駆動型イノベーションを縛る障壁となっているのである。この障壁を打破するためには、次の(1)から(3)が必要となる。

(1)データ流通
(2)制度改定
(3)企業経営に必要な認識や判断や行動のフレームをIoTの時代にふさわしいものに拡大
具体的には、IoT経営学とかIoT経済学という理論と実践の体系を形成し、企業や行政の各部での意思決定権限者のマインドセットを変革して、 「これまでにない新たな観点やこれまでにない新たな粒度で現実空間の領域に着目した問題解決アイデア」を理解し評価し実行の可否を決断できるようにすることが必要である。


具体的には、次のような変革が必要である。

A.所有権と使用権が中心 ⇒ 制御権と使用権が中心
B.マスマーケット中心 ⇒ ニッチマーケットの集合体であるロングテール中心
C.長周期のシーケンシャルな事業開発プロセス(ウォーターフォールモデル) ⇒ 短周期の組織学習による事業開発プロセス(リーンスタートアップ
D.垂直統合型の専用システム ⇒ 水平統合型の汎用システム
E.資本と労働が中心の経営 ⇒ 知識と知的財産権が中心の経営
F.ピラミッド型の組織体制 ⇒ 個人が緩やかに結合したフラットな組織体制

【参考サイト】

1.「センサ×ビッグデータ」ビジネスの可能性 - 日本政策投資銀行
http://www.dbj.jp/pdf/investigate/area/kansai/pdf_all/kansai1405_01.pdf


Internet of Things(IoT)で機器をつないで新市場の創出へ
http://www.dbj.jp/ja/topics/report/2013/files/0000015043_file2.pdf

2.センサーデータを活用したビッグデータビジネスの進展 野村総合研究所
http://www.nri.com/~/media/PDF/jp/opinion/teiki/it_solution/2014/ITSF140103.pdf

3.ユビキタスネットワーク時代における知的財産権の課題と日本の国家戦略
http://www.patentisland.com/memo59.html

4.特許第5445722号 アプリの要求に合致したセンサをアプリに結合する機能( Senseek )
http://www.omron.co.jp/about/ip/patent/17.html


上記図の出典:http://www.omron.co.jp/about/ip/patent/17.html

5.ユビキタスネット社会の深化 ロングテールと起業
http://www.nri.com/jp/opinion/chitekishisan/2006/pdf/cs20060104.pdf

6.リーンスタートアップ
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120918/236982/?rt=nocnt
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