338. 困難な事は良いことであり、チャンスであると思え

「それは簡単ではない」とか「それは難しい」という言葉で、困難な事が悪いことであるかのように言ったり、困難な事を取り組むべき事項のリストから削除をするべきではない。

大変に重要であるが困難度が高いために未解決のテーマを選び、自分で徹底して考えて、その事項の背景にある目的や理想状態を把握したり、現状の問題点や関係する事項の状態や 、各事項の間の依存関係などを自分で把握するために考察するのに長時間を使うことは、イノベーション創造の第1歩である。そして、それは本人の能力を格段に向上させる。 特に若手は、困難はチャンスであると思わねばならない。困難へのチャレンジは自分の能力を若いうちに高めることができるし、大きな貢献をできるチャンスでもある。

困難へのチャレンジの場合であってもなくても、自分で思考して把握した内容は、できるだけ明確でしかも上位概念で表現するとともに、キーとなる事例を具体的な下位概念でも明確に 記述するという癖を付けることが必要である。
それによって、思考の幅が広がるし、深みも増すし、具体的なアクションも実行できるようになる。

会議で1つのテーマについて検討した場合でも、検討結果としての会議の結論も、できるだけ明確でしかも上位概念で表現するとともに、キーとなる事例を具体的な下位概念でも 明確に記述しなければならない。もしも、会議参加者の同意が得られず、1つの結論に到達できていないのであれば、結論候補を1個以上記載するとともに、その結論候補に 対する異論や問題点の指摘の内容も記載する。この場合も結論候補も異論も明確に表現しなければならない。

やってはならないことは、「本音と建前をの使い分け」と「玉虫色の表現による決着」と「責任の所在と期限の不明確化」と「目標の定義の変更による目標達成の偽装」である。
これらは、「東大話法」とか「霞ヶ関文学」と言われている組織の官僚化や組織衰退の根源と本質は同じである。 保身のために責任回避を最優先しながら権力を維持・拡大するテクニックの集大成である。
これをやると、一時的には関係者間の葛藤は顕在化しないが、問題解決が先送りされるだけでなく、関係者がばらばらの方針で自己正当化しながら活動を行ない、後で大きな問題と 相互不信を関係者間にもたらし、大変な悪影響を生じさせる。
民間企業では衰退ループに入り、顧客への価値提供ができなくなり倒産に至る。

やはり、本音を直接にぶつけあって葛藤し、自分たちで悩んで問題解決を早期に行なうことが正しい。
これを実行するためには、関係者が本音の部分で相互信頼を築けているということが必要になるし、各人が保身意識を捨てることも必要になる。 そのためには企業を構成するメンバーは、その企業の企業理念を実現するために集まった同志であるので、性格が気に入らない相手でも最後は信頼できると本音でも言える状態にならねばならない。
しかし、実際には信頼できるメンバーばかりではないので、信頼できる奴等を見つけ、自分も信頼されるように行動し、相手かまわず常に本音をぶつけ、ぶつけた相手が離れれば、それも良しとするのである。
人間関係や表現のレトリックばかりを気にするのは、関係者を信頼していないということと、自分が関係者から信頼されていないということと、自己保身意識が強いという事の結果である。

これを乗り越えるためには、愚直に真面目に考え、行動し、物事は明確に表現することだと思う。その意味では請求項の設計は良い訓練となる。
その意味でも、特許業務に従事することは大変にラッキーな事だと思う。
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