247. 事業・技術・知財の三位一体の活動には、組織の創発的相互進化の実現が必要である。

事業活動は、顧客や社会に対して価値を提供できる機能を、商品やサービスを通じて、競争力と成長性を持って供給するという活動である。
技術活動は、顧客や社会に対して価値を提供できる機能を、技術を用いて商品やサービスの中に競争力と成長性を持って実現する活動である。
知財活動は、顧客や社会に対して価値を提供できる機能のための活動の競争力を、知的財産および知的財産権を用いた手段を中心として強化する活動である。

上記の説明から、事業活動と技術活動と知財活動の3つの活動はシーケンシャルに接続されて、業務や情報がベルトコンベア式に上流から下流の一方向に 整然と流れながら実行されるものでは全く無いことがわかる。
さらには、事業活動においても、技術活動においても、知財活動においても、「顧客や社会にとっての価値」、「そのような価値を提供できる機能」が 何であるかを認識するか、少なくとも認識するために努力することが大変に重要であることがわかる。
この認識なくして、単に競合との競争を行なっていては、一瞬だけは競合に対して優位にたてるような偶然があったとしても、中長期的には必ず、 顧客および市場から見放されて、淘汰される。間違った道を走っているからである。
顧客および市場は、変化し続けている。この変化の原因は、競争に基づいた進化と慣性と環境変化が主要な原因であると考える。 そして、競争の参加者は環境および競合や市場や顧客などの現在および未来の動きを考慮しつつ活動しているので、本質的に予測不能な部分を含む。

このように、予測不能な部分を含んだ市場環境の中で、価値を提供しつつ、企業が維持発展していくためには、企業組織は組織学習の能力を有して、 常に進化と環境適応を継続することが必須となる。

この組織学習をダイナミックに、そして変化する環境に追いつくスピードで実行し続けるためには、事業活動と技術活動と知財活動の3つの活動がシーケンシャル に接続されて、業務や情報がベルトコンベア式に上流から下流の一方向に整然と流れながら実行されるという方式では全く駄目である。
なぜならば、そのような方式では事業活動と技術活動と知財活動の相互評価による問題発見と問題対策が行なわれにくいためである。 すなわち、組織間のシーケンシャルな接続では、後段の活動は前段の活動が終わるまで開始できないし、後段の活動は前段の活動と入力情報や環境情報を 共有できないので、後段の活動は前段の活動の環境についても処理内容についてもチェックも助言も支援もできないからである。

しかし、事業活動も技術活動も知財活動も、「顧客や社会にとっての価値」、「そのような価値を提供できる機能」を独自の方法で把握し、評価するという ことを行なっていると、事業活動にとっては技術活動と知財活動の2つが自分の活動をチェックして、事業活動の進化に結びつけるためのインフラとなる。
技術活動の進化のためには事業活動および知財活動によるチェックがインフラとして利用できるし、知財活動の進化のためには事業活動および技術活動によるチェックが 知財活動の進化のためのインフラとして活用できる。

すなわち、事業活動、技術活動、知財活動の三者において、「顧客や社会にとっての価値」、「そのような価値を提供できる機能」の独自認識に基づいた相互チェックが 行なわれることで、三つ巴構造で組織全体が進化するという「創発的相互進化系」を形成するのである。事業活動、技術活動、知財活動の三者の有機的で因果関係を持った連携活動計画を 「戦略マップ」において記述し、協力して「戦略マップ」を実行することが必要である。

三つ巴の図柄
出典: http://ganbare-kiuchi.com/wp-content/uploads/2008/01/17.jpg


事業・技術・知財の三位一体の活動を、組織の創発的相互進化にて実現することで、組織の活性化(参考サイト1)が行なわれ、組織の知能(参考サイト2)が向上する。

組織の創発的相互進化に寄与するためには、知財部門は、参考サイト4にあるような考え方で活動を行なうとともに、それができる人材を配置することが必要となる。

【参考サイト】
1. 組織の活性化のモデル
2. 組織知能再考
3. ものづくりとサービスのイノベーション 技術、事業、知財の三位一体化
4. 知財経営の下での知財部門の役割 知識創造型の知財部門の構築に向けて

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