217. イノベーション創造モデルのレベル

イノベーションを実現したいと考え、行動している企業や団体、国家が多数存在している。 何をどのようにすればイノベーションが実現できるのかについての仮説やモデルには、色々なレベル がある。
イノベーション創造についての仮説やモデルの妥当性や適用範囲が悪ければ、その仮説やモデルに基づいた イノベーション創造の方策が成功する確率は低くなる。 イノベーション創造のモデルには、例えば次のようなレベルがあると考えられる。

【レベル0】資源投入量を増やせばイノベーション創造の確率が上がるというモデル
(1) 開発テーマや事業への投資金額を増やせばイノベーション実現の確率が上がるというモデル
(2) 開発テーマや事業への投入人員を増やせばイノベーション実現の確率が上がるというモデル
(3) 開発テーマや事業において収集し、分析する技術や知識の情報量を増やせばイノベーション実現の確率が上がるというモデル

【レベル1】優先順位を付けた資源投入量の分布によって、イノベーション創造の確率が上がるというモデル
(1) 複数件の開発テーマや事業において、それらの間での優先順位を付けた適切な投資金額によって、 全体としてのイノベーション実現の確率が上がるというモデル
(2) 複数件の開発テーマや事業において、それらの間での優先順位を付けた適切な人員投入によって、 全体としてのイノベーション実現の確率が上がるというモデル

【レベル2】投資金額、投入人員、投入する技術や知識の、質と量に関して、開発テーマや事業の優先順位 や特性に応じた最適な1セットを実現することで、イノベーション創造の確率を上げるというモデル


1つのプレイヤーの内部における資源配分や組み合わせの範囲を超えて、複数のプレイヤーの連携関係 を通じたイノベーションは、資金、人員、技術や知識の組み合わせの新規性やダイナミズムを拡大す ることができる。そのため、大きなイノベーションを実現する確率を向上させるには、 複数のプレイヤーの連携関係の中から生み出すという高度なレベルのモデルが必要となる。
下記のように、レベル3以上の高度なイノベーション創造モデルがある。

【レベル3】大学の研究室の有望なシーズ技術を、民間企業に移転するという産学連携がイノベーション実現 の確率を上げるというモデル

【レベル4】有望な事業に挑戦しつつあるベンチャー企業と、大学の研究室の有望なシーズ技術の組み合わせと ともに、有効な事業戦略やビジネスモデルを提供する戦略家が連携することで、イノベーションの確率を 上げるというモデル

【レベル5】レベル4のイノベーション創造モデルにおいて、各プレイヤーの間の利害対立を減らすため 、各プレイヤーの連携関係の組み合わせの多様性の拡大のため、非営利で中立的で知的なプレイヤー を介在させることで、イノベーションのサイクルが拡大回転するというイノベーションエンジンのモデル

イノベーションエンジンは、言わば複数のプレイヤーの連携が上位レベルの生命体を実現するような ものである。イノベーションエンジンは下位のレベルのイノベーション創造のモデルに比較して、 大変に複雑なものではあるが、一度出来上がると自律性と安定性が生まれ、下位のレベルのイノベーション モデルよりも大きな成果を継続的に得ることが期待できると考える。
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