208.イノベーション促進に必要な、壮大な課題、美しい解決策ビジョン、イノベータへの尊敬と優遇

知的財産権制度は、イノベーション促進にはイノベータの利益確保のための一定期間の独占排他権が 必要だという発想で設計されている。
しかし本質的には、イノベータの利益確保にはイノベーションの生み出す価値を認めて、その価値の 顧客となる者の存在が不可欠である。独占排他権は、そのような顧客が存在する領域でのみ意味がある。 そのような顧客がいない領域を独占排他権で囲い込んだところで、事業利益を得ることは出来ない。

また、イノベーションは人間の頭脳によってのみ実現されていることを忘れてはならない。
イノベーションを起こす人間は何も利益の獲得を最大の目的にしてイノベーションを起こそうとして いるのではない。
大きな価値を産み出したい、イノベーションを創出して世の中や自分の所属企業に貢献したいという 情熱の果たす役割の方が、イノベーション創出ではイノベーションによって利益を得たいという意識 の役割よりも大きい。

このような情熱は、イノベーションによる解決が必要とされる壮大な課題、その壮大な課題を解決する ための美しい解決策のビジョンを認識できれば、多くの人々がその壮大な課題に挑んで、自己実現を 果たそうとして生じる。このような人々の能力と情熱を上手に組織化して、 イノベーションが社会や顧客に価値を提供して事業利益をも生み出す可能性を増大させるとともに、 イノベータを尊敬し、優遇する風土を形成できれば、イノベータの志とやる気は増大し、 次々に新しいイノベータは生まれ、新しいイノベーションが続いていく。

IPオフィサー(1級知的財産管理技能士)には、イノベーション創出から事業利益を獲得する プロセスを形成し運用することと、イノベータを尊重し優遇する風土の形成に、知的財産の立場から 大きく貢献することが望まれる。
IPエージェント(弁理士)には、イノベーションの成果を知的財産権に仕上げ、事業利益獲得の手段 として活用できるように用意することと、他者の知的財産権への侵害の有無の鑑定を迅速・正確に行なう ことが望まれる。
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