203.方法論から組織へと、組織から方法論へ

社会的問題やビジネス上の問題を解決する場合、方法1と方法2のどちらのアプローチの方が、成功確率が上であろう か? または現実的であろうか?

方法1: 問題解決の方法論はわからないが、とりあえず、その問題を解決をするための組織を立ち 上げる。そして、その組織で問題解決の方法論をPDCAサイクルの実行の中で作り上げて、問題解 決する。

方法2: 問題解決のための組織は無いが、まずは、解決対象の問題についての因果関係を分析し、 因果関係に基づいて、問題解決の方法論を案出する。その方法論に基づいて必要な人材と組織を明確 化して組織を構築して、対象の問題をその組織で解決する。

方法1は、PDCAサイクルをまわしながら解決できる問題には適用できる。
すなわち、適切な方法論を考える前に、妥当そうに思える方策から実施し、方策の実施の影響を見ながら、 方法論および方法論の実行組織を少しづつ改良していくことが可能ならば、実行できる方策である。
しかし、PDCAサイクルをまわせない場合、たとえば、方法論がないまま作り上げた組織が、その 組織が解決しようとしている問題の構造を把握できなかったり、その組織が問題解決に近づいているのか 遠ざかっているのかを認識する能力を持てなかった場合には、CもAも実行できず、PDCAサイク ルは回らない。 その結果、何をしていいのか、何をしているのかもわからないまま、組織が右往左往して崩壊するという ことになってしまう。

しかし、PDCAサイクルさえまわせば、何とかなるということでもない。
少しでも途中で間違ったことをすると、取り返しがつかないクリティカルな問題の解決には、PDCA サイクルをまわすというスタイルは採用できない。最初からきちんと方法論を考えて、次にその方法 論を実践できる組織を構築するという方法2が必要である。
組織の名前、組織の長の肩書き、組織の規模という非本質的な事項をとりはずして、解決すべき問題、 解決対象と解決主体の構造を考え、問題に情報処理や制御の原理を適用して考察すれば、本質が見えてくる。

簡単な構造で、クリティカルな危険性もない問題であって、少しづつ組織の能力を向上させながら、 問題解決すれば良いという余裕のある問題の場合には、方法1でも、解決策として採用できる。

たとえば、達成すべき目的が「自動車で北極点に行く」ということであったとする。その場合、自分の 現在位置と北極点の間の距離という評価指標や、現在位置からの北極点の方向を把握していれば、 燃料を効率的に使って自動車を走らせることは、目的達成に有効である。
しかし、北極点の方向もわからず、現在位置と北極点の間の距離もわからない状態では、燃料を効率的に 使用するということは、目的達成に有効かどうかは無関係となる。 なぜなら、自動車が南に向かっていれば、燃料を効率的に使って走れば走るほどに、目的地から遠ざかる からである。無駄を省いて効率を上げることが有効なのは、向かっている方向が目的に近づく方向の場合 に限られるのである。
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