123. 特許権の銀行(全分野パテントプール)の構想と、それに必須な請求項記述言語

MPEG LAが事務局となって、情報通信の分野を中心として、多数のパテントプールが形成されている。
故意に特許権者の特許を侵害しようと考えていなくても、膨大な特許権の存在のため、調査漏れなどに起因して、何らかの特許権侵害をする可能性 は、知財立国政策の進展と共に増大する。
事業者の立場から見ると次の事が言える。
通常の製品は利益率が10%にもならない。しかし、特許権の実施料率は3%とか5%などが普通であるので、 2件の特許権の侵害が発生するだけで、利益が全部吹っ飛んでしまう。
特許権者の立場から見ると、特許権を用いて市場を独占しようという欲求よりも、有力な技術を保有する他社と 提携して新市場を開拓するための切り札に特許権を用いようとか、他社から実施料収入を得ようとの欲求の方が 強い。
しかし、特許権の活用には、活用の費用や手間、相手からの思わぬ反撃のリスクなどを克服するというエネルギー が必要となる。
そこで、もし、次のような仕様の全分野パテントプール(特許権の銀行のようなもの)があれば、ライセンサーにとって もライセンシーにとっても、大変に便利である。

(1)どんな分野の特許権であっても、そのパテントプールにライセンス対象の特許権として登録できる。登録 に際しては、その特許の請求項を請求項記述言語で記述する。
(2)ライセンシーは売り上げの3%をロイヤリティとして支払えば、全分野パテントプールに登録されている 中のライセンスが必要な特許権を最大10件までは自動的にライセンスを受けられる。そして、売り上げの5% をロイヤリティとして支払えば、全分野パテントプールに登録されている中のライセンスが必要な特許権をいくらでも 自動的にライセンスが得られる。
(3)ライセンスが必要な技術と国名とライセンス希望期間を、ライセンシーが請求項記述言語(PCML)で記述して、 全分野パテントプールシステムに入力する。そうすると、このシステムは、ライセンスが必要な国においてライセンス 期間内に権利期間を有する特許権の請求項と、ライセンスが必要な技術を請求項記述言語の体系の下で自動的に 比較して、ライセンスを必要とする特許権を抽出する。(グラフ理論における、部分グラフマッチングのアルゴリズムを用いる。)
(4)ライセンス対象として抽出された特許権が、一つのライセンス対象製品に複数個あるときは、自動的に実行される アルゴリズムによって、複数個の特許権の間でロイヤリティを分配する。

以上のことから、特許権の銀行としての「全分野パテントプール」の運営のためには、ライセンス対象の特許権 を膨大な特許権の在庫の中から自動抽出するためのシステムが必要であり、そのシステムの実現には請求項記述言語が 必須であることがわかる。
【参考サイト】
(1) あなたもトライ!おもしろ知財ビジネス 再ライセンス事業
(2) 特許流通促進事業

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