9. 素晴らしすぎて理解されないまま放置されている発明

職務発明の対価を引き上げることで発明者の発明意欲を増進し、良い発明をた くさんしてもらおうという思想が、多くの企業や国の知的財産戦略の中に盛り 込まれています。確かに、発明者も人の子であり、金銭が欲しいのは確かで す。しかし、私の経験では発明者は、発明を現実の物にしたいとか、世の中で 広く使ってもらいたいとか、発明によって歴史に名を残したいという欲求も強 く持っています。たぶん、自分の発明を現実化したいという欲求が、発明者の 欲求の中では最大の部分を占めていると思います。また、発明者は、自分の発 明の本質を他人に指摘され、しかも、指摘された発明の本質が発明者自身が考 えていたのよりも広く、雄大であり、広大な応用分野が派生するビジョンが描 けると、非常に喜びます。そして、そのビジョンのもとで、さらに優れた発明 をしようと、はりきってくれます。そして、発明が切り開く雄大なビジョン は、経営者も動かし、さらには他の企業も巻き込んだ大規模プロジェクトに発 展する可能性もあります。この点が、世間でよく言われている知的財産戦略に は抜けている観点です。このように、発明の本質は発明者自身でもなかなか把 握しにくいものですので、発明をプロトタイプという現実の物に具現化して、 多くの人々に、発明が切り開く未来を感じてもらうことが重要となります。企 業の中にも、発想があまりにも雄大であり、あまりにも先行しているために、 周りに理解されず、経営資源を投入されることなく、埋もれたままになってい る発明も多くあります。日本国の知財戦略のためにも、「素晴らしすぎて放置 されている発明」をプロトタイプ化する仕組みが必要だと思います。国の研究 機関が役割を果たす分野の1つではないかと思います。

【関連図書】

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