84. 請求項の特徴量を用いた請求項の定量評価
請求項記述言語(PCML)を用いて、請求項を構造化することで、例えば次のような特徴量を請求項について求 めることができるようになる。特徴量を用いて、自動的に請求項を定量評価すれば、特許戦略の実行を高度化できるし、 説得力のある特許戦略の推進ができるようになる。これは、組織を動かして、特許戦略を実行する上で、非常に大きな メリットを与える。

● 第1特徴量
 (1)特徴量の名称: 多用語を用いた新規性のある請求項である度合い(P1)
 (2)特徴量の背景となる考え方:
   請求項は、過去の文献において多用されている用語を用いて構成要素名を表現した方が権利範囲が広くなるとともに    権利範囲の明確化にとって有利となる。
   しかし、請求項を構成する構成要素名をすべて含む文献が多数存在すると、新規性を否定される危険が大きくなる。    そこで、構成要素名が多用された用語でありながら、請求項の新規性が高いという度合いを示す特徴量が必要となる。    この特徴量の値が大きいほど良い請求項となる。
 (3)特徴量の算出アルゴリズム:
   特徴量の算出アルゴリズムをできるだけ数学的に表現するために、次の記号を定義する。

   claim : 1つの請求項の文字列
   element : 請求項の任意の構成要素の文字列
   element(k) : 請求項の第k番目の構成要素の文字列
   elem_name : 任意の構成要素の構成要素名の文字列
elem_name(k) : 第k番目の構成要素名の文字列
   num_elem : 請求項を構成する構成要素の個数

     下記サイトの特許庁の公報テキスト検索で、請求の範囲を検索して得られるヒット数を用いて、次の量を定義する。 http://www7.ipdl.ncipi.go.jp/Tokujitu/tjkta.ipdl?N0000=108

   hit_elem(k) : 第k番目の構成要素名であるelem_name(k)を用いて公報テキスト検索で請求の範囲を検索して得られるヒット数
hit_allname : 全ての構成要素名である下記のものをAND結合で並べて、公報テキスト検索で請求の範囲を検索して得られるヒット数
           elem_name(1), elem_name(2), ---- , elem_name(num_elem)

P1 = Min(hit_elem(1), hit_elem(2), ----- , hit_elem(num_elem)) / (1 + hit_allname)

注)
  @上記の式において分母を1 + hit_allnameというように、1を加算したのは、hit_allnameが0となって答が無限大となるのを避けるためである。
  A上記の式において、関数Min(x1,x2,---- , xN)は、x1,x2,---,xNの中の最小値を出力する最小値関数である。

● 第2特徴量
 (1)特徴量の名称: 多用語を用いた進歩性を主張できる請求項である度合い(P2)

 (2)特徴量の背景となる考え方:
   請求項は、過去の文献において多用されている用語を用いて構成要素名を表現した方が権利範囲が広くなるとともに    権利範囲の明確化にとって有利となる。
   しかし、請求項を構成する構成要素名の大部分を含む文献が多数存在すると、進歩性を否定される危険が大きくなる。
   そこで、構成要素名が多用された用語でありながら、請求項の進歩性を主張できる度合いの高さを示す特徴量が必要となる。
   この特徴量の値が大きいほど良い請求項となる。
 (3)特徴量の算出アルゴリズム:

   前記の記号定義に加えて、次のものを定義する。

   hit_except(k) : 請求項を構成する全構成要素名から第k番目の構成要素名であるelem_name(k)のみを除いた全構成要素名をAND結合で             並べて、公報テキスト検索で請求の範囲を検索して得られるヒット数

   そうすると、特徴量P2は、次式で得られる。

P2 = Min(hit_elem(1), hit_elem(2), ----- , hit_elem(num_elem)) / (1 + Max(hit_except(1),hit_except(2),---,hit_except(num_elem)))

注)
  上記の式において、関数Max(x1,x2,---- , xN)は、x1,x2,---,xNの中の最大値を出力する最大値関数である。

● 第3特徴量
 (1)特徴量の名称: 構成要素数(P3)

 (2)特徴量の背景となる考え方:
    請求項の権利範囲は、構成要素数が小さいほど広くなる。なぜならば、全ての構成要素を備える製品やサービスが、請求項を侵害するという ことになるためである。
 (3)特徴量の算出アルゴリズム:

    構成要素の個数を数えて、それを特徴量として設定する。

● 第4特徴量
 (1)特徴量の名称: 未定義用語数(P4)

 (2)特徴量の背景となる考え方:
    未定義用語を含む請求項は、権利解釈に争いが増え、権利が不安定になるとともに、権利行使のコストが 大きくなる。
したがって、未定義用語は少ないほうが良い。
 (3)特徴量の算出アルゴリズム:

    請求項を構成する用語を、概念辞書で検索してヒットしなければ、未定義用語としてカウントアップする。


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