66. 特許戦力は何によって定まるか?

特許戦力は、次の要因の総合力によって定まる。
 (1)特許権活用上での各種の障害を乗り越えてでも活用しようとする目的の存在と、その目的達成の意志(大義名分の存在)
 (2)特許権の権利範囲の広さと、権利範囲内のマーケットボリュウム
 (3)その特許発明の侵害発見容易性
 (4)特許権の権利期間の長さと特許権の個数
 (5)他社製品の侵害摘発能力(他社商品の収集分析能力を含む)
 (6)公知技術の調査・分析能力
 (7)訴訟能力と交渉能力
 (8)自社・他社の特許情報の管理体制(特許の内容へのアクセスの容易性)
 (9)特許権を活用する担当部署の士気と知識・能力
(10)特許権を活用する担当部署の社内的な地位の高さ
(11)特許権活用における意志決定体制と必要予算の確保の状態
(12)特許権活用の担当部署と他の部門との協調体制の強さ
(13)特許権活用担当部署の戦力についての世間の評判(間接的な戦力)

【特許戦力の性質】
特許戦力の中核である特許権は、次の点で弓矢に似ている。
(1)構築や維持に多くの労力と費用を必要とする。しかし、適切な情報システムを構築すれば、少人数でその戦力を行使して、多大な戦果をあげることができる。
(2)特許権も矢も構築に時間がかかる。
(3)標的に照準を合わせてはじめて、戦力としての価値を生じる。
(4)配備しているだけで威圧感を周囲に与える。

特許権が弓矢と異なるのは、次の点である。
(1)特許権は配置位置の変更(出願国や特許請求の範囲の変更)が困難である。
(2)特許権は発射指令を出して、敵上で爆発するまでに長期間を要する。
すなわち、相手との交渉や訴訟に時間がかかるのである。
弓矢を用いた戦争での戦力と比較した比喩で特許戦力の概念を整理してみた。

【弓矢と特許権との対応付け】
矢:特許権
弓:特許権の行使を担当する部門の社内での権限、特許権行使のための予算
射手:特許権の行使を担当する部門またはその部門の要員
矢をつくる動作:出願して特許権として成立させる動作
射手が的をねらう動作:特許権を侵害するイ号についての侵害の証拠を握る動作
射手が弦を引き絞る動作:特許権行使のための社内の意志を決定し、体制と予算をそのプロジェクトのために集めて用意する動作
射手が矢を弓から解き放つ動作:侵害企業に対して訴訟を提起したり、警告書を送ったりする動作
矢がささった相手を捕まえる動作:訴訟や侵害警告後の和解交渉などのライセンス活動

【特許戦力の説明】
矢を弓につがえて、的をねらって、弦をひきしぼり、適当なタイミングで矢を解き放ったら、矢は的に向かって飛んでいく。 従って、矢がたくさんあって、倉にたくわえていても、弓につがえなければなんの戦力にもならない。矢と弓があっても射手 がいなければ矢を弓につがえることはできない。射手は、的を探して狙いを付けて、弦を引き絞るだけの能力がな くてはならない。そして、適切なタイミングで射手は矢を解き放つ決断力も持っていなければならない。

このような比喩で特許戦力を把握すると、次のような数式が導ける。

【特許戦力を表現する数式】
特許戦力を数式であえて表現すると、次のようになる。
特許戦力=(特許権の強さ)×(特許部門の侵害摘発能力)×(訴訟能力+交渉能力)
広い特許権を多数保有していれば、(特許権の強さ)は大となる。競合企業の商品が自社の特許権を侵害している 証拠をつかむ能力と体制が充分に整備されて運用されていれば、(知財部門の侵害摘発能力)は大となる。また、 侵害企業に対する訴訟を実行する能力や直接に相手と交渉する能力が高ければ、(訴訟能力+交渉能力)は、高く なる。
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