50. 特許業務の基礎となる情報処理と請求項記述言語

特許業務は、発明の抽出や創造、発明の評価、特許出願、中間処理、権利評価、権利 活用という流れが一般的なものとなります。この一般的な流れの周りに、技術戦略、事業戦略へ 寄与するための業務、他社特許リスク管理業務、特許調査業務、特許管理システム、特許教育などが あります。これらの業務を遂行する上で、特許担当者または特許管理システムが行なう情報処理 の形態には、次のような主要なものがある。

(1) 請求項と対象技術の比較判定
請求項を構成する各構成要件の技術を、対象技術の要素技術と比較して、類似性や包 含関係を判定するものです。 先行文献と比較判定することで、請求項記載の発明の新規性や進歩性の有無の判断の 基礎とします。これは、出願前の特許調査や、中間処理における引例との比較における基礎的な情報 処理です。他社製品情報と、自社の特許権の請求項の各構成要件を比較することで、自社の特許 権を侵害しそうな他社製品の抽出を行ないます。いわゆる侵害鑑定です。 逆に、自社製品と他社の特許の請求項の比較によって、他社特許リスクを判定する基礎情報とします。


(2) 権利範囲が広く、堅牢な請求項を持つ特許の抽出
特許請求の範囲中の独立項を構成する単語の個数が少ない方が権利範囲が広い、請求項を構成する単語 が上位概念を用いている方が権利範囲が広い、請求項を構成する単語が形容詞や形容動詞などのような 主観的な概念を含まない方が堅牢であるという評価基準を用いて、請求項を評価するというものです。 この評価結果に基づいて、価値ある特許を抽出します。そして、価値ある特許を権利活用の対象としたり、 特許の金銭的価値の評価を開始します。この情報処理では、請求項中の重要な単語を切り出すことが、 基本となります。

(3) 特定のキーワードや分類符号を持った特許の検索
注目する技術を記載した特許を抽出します。

(4) 上位概念の抽出と不要な構成要件の削除

請求項の設計においては、実施例レベルの発明を上位概念化して、広い権利範囲の発 明を得たり、発明の 本質を得るということがされます。また、そのプロセスで不要な構成要件を削除し て、必須な構成要件を得るということも行なわれます。

このようにみてみると、上記の(1)と(2)のような請求項の分析が特許業務にお ける中心的な情報処理であることがわかります。 請求項の分析を正確に自動的または半自動的に行なえるようにするためには、請求項 が人間にもコンピュータにも読みやすい構造をしている必要があります。 その意味で、請求項の意味的 構造を記述できる請求項記述言語は特許業務において非常に重要な位置づけを持ちます。
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