380. データ所有権についての日本政府の検討の経年履歴

IoT産業革命を日本国が実現するためには、データの法的保護が必要である。しかし、民法が規定している所有権では、権利の客体が「物」であり、それは有体物であるとされているため、 現在の民法学での通説に従っていたのでは、所有権によってはデータの保護はできない。
著作権や特許権などの知的財産権で保護されるためには、創作性という要件と、人間が作成したものという要件があるので、客観的な事実を示す情報であるセンシングデータの法的保護はできないし、 人工知能が創作した情報についても法的保護ができない。(参考サイト2)
不正競争防止法で規定している営業秘密としてデータを法的に保護するということも、データの秘密管理という要件がデータの活用を阻害するので、データの法的保護には不適切である。
すなわち、現在の法的枠組みでは、IoT産業革命を日本国が実現するためのデータの法的保護は無理である。
したがって、「データ所有権」を法的に実現するための新規立法または民法の改正または解釈の大変革によって、所有権の客体にデータを入れることが必要である。(参考サイト1)
これを実現するためには、特に法律学者が法律の根本目的に立ち返って、これまでの受験勉強で学習した法的知識に拘らず、素直な心でデータ所有権を実現する法律の設計をすることが重要である。
日本国政府も、2006年頃から、データ所有権の必要性に気付いて、データの所有権を明確化することが必要ということを発信してきている。
その状況を示すために、”データの所有権”や"データ所有権"や"データオーナーシップ"という語句の、日本政府のWebサイト上でのヒット件数を2006年以降の各年ごとにまとめると、次のとおりである。

2006年: 2件
2007年: 3件
2008年: 5件
2009年: 6件
2010年: 11件
2011年: 20件
2012年: 5件
2013年: 7件
2014年: 25件
2015年: 43件
2016年: 56件


【参考サイト】
1.  所有権の本質と所有権の客体である有体物の概念を明確化して、データ所有権をブロックチェイン技術を用いて現実化する方法
http://www.patentisland.co.jp/memo370.pdf
2. IoT産業革命を駆動するマシン生成情報の法的保護の新たな枠組みの展望 2016年4月16日
http://www.patentisland.co.jp/smips_2016-04-16_presentation_by_patentisland_corporation.pdf#page=14

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