194.「企業は社会の公器」と知的財産権

松下幸之助の遺訓である「企業は社会の公器である」という言葉は、人類社会が国民国家の時代を 超えて、次の社会構造に向かうための大きな指針となっていると思う。
国民国家は民主主義と法治主義をもたらしたが、戦争の大規模化ももたらした。

企業は、国民国家が形成した国境を越えて世界に広がる。その企業が企業利益のためには従業員も 地球環境もないがしろにして、株主と一部の経営者の利益のためだけの利益製造マシンになってしま っては、国境を越えて自由に勢力を拡大できるものだけに、企業の社会への悪影響は国民国家よりも 大きいことになる。しかし、企業が「社会の公器」としての自覚を持った経営者および従業員によっ て運営されたなら、企業は国民国家の枠を超え、人種や宗教や民族を超えた連帯と福祉と生き甲斐を もたらす存在となるだろう。

「企業は社会の公器である」という遺訓のもとで、知的財産権はどうあるべきだろうか?
知的財産権はイノベーターを励まし、イノベーターに適度な利益を良いタイミングでもたらし、社会 にイノベーションの効果と幸福が普及する触媒になるべきと思う。そのためには、知的財産権の設定 と運用の時間とコストと、知的財産権に関する法的判断のコストと時間を劇的に削減する必要がある。 知的財産権自身は、社会に価値を提供するものではなく、イノベーションによる価値を社会に普及さ せる触媒であるためである。

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