161.機密保持契約は「トロイの木馬」にもなり得るので、注意が必要

機密保持契約は、企業間契約の中で最も一般的で件数も多いし、その契約締結の段階では金銭のやりとりが 発生しないので、気軽に締結されることが多い。
しかし、機密保持契約には意外な危険が隠されている。
機密保持契約を締結するときには、その契約を担当した何らかのプロジェクトが存在していて、マネージャも 担当者も何が機密情報であり、それをどのように管理すべきは心得ている。

しかし、次のような事情があると、時間とともに、機密情報は適切には管理されなくなる。
(1) 機密情報を受け取ったプロジェクトが目的を達して消滅したり、担当部署も別のテーマに関心が移る。
(2) 機密保持期間が長すぎたり、機密保持条項を含む契約が自動更新されて機密保持義務が長期となる。
(3) 機密情報が社内で少しづつ拡散し、さまざまなドキュメントなどと混ざっていき、何が機密情報であ るかを認識できていない者が増えていく。

まるで、自社内に送り込まれたトロイの木馬から忍び出た兵士が、自社内の色々な場所に潜入しているかの ような状態になるのである。
他者からの機密情報が自社内に拡散し、しかも機密保持義務があることもわからなくなってしまっていると、 ある日突然に機密保持義務違反を情報開示者に主張されると、その社内は大混乱に陥る。

まるで、トロイの木馬から忍び出た兵士が、各所で大暴れを開始したかのような状況である。
機密情報の漏洩や機密情報の目的外使用に基づいた損害賠償請求、機密情報を用いた発明などについての 権利の移転請求が、情報開示者から行なわれる可能性がある。しかも、混乱は機密情報が拡散した社内の さまざまな部署に及ぶ。

機密保持契約は時限爆弾にも例えることができるし、トロイの木馬のような危険性があるので、 注意が必要であるし、武器として活用されることもあり得るという視点も必要である。
【参考サイト】
1. トロイの木馬
2. 機密保持契約

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