136.特許権の威圧効果が発揮されない場合

特許権を積極的に権利行使しなくても保持しているだけで威圧効果が発揮されることができれば、 特許権活用のコストパフォーマンスは大変に高くなる。
ここで、威圧効果とは、侵害した場合の権利行使 を怖れて、最初から特許権侵害行為を回避する行動を他社に選択させるという効果のことである。
したがって、特許権の威圧効果がどのような条件の時には発揮されないのかを認識しておくことは、 重要となる。
対象とする事業分野をカバーする出願中または権利化済みの1件以上の特許からなる特許群Aが有する 威圧効果について述べる。

【威圧効果が発揮されない場合】
(1)特許群Aの公報が発行されて公知となる前に事業開始した他社の商品やサービス
(2)最初から特許調査をすることなく行なわれた他社の商品やサービス
(3)不適切な検索式による調査のため、特許群Aを見逃した場合
(4)検索によってヒットした特許の請求項を読まず、発明の名称や要約文だけを見て特許群Aを見逃した 場合
(5)請求項を読んでも意味を誤解したり、根拠無く無効の特許であると判断して特許群Aを無視した場合
(6)自社製品と特許群Aの侵害関係を間違った論理で判断し、非侵害と判断した場合
(7)特許群Aの権利者が権利行使をして来ないと判断した場合

上記の(1)〜(4)の場合では、どんなに強力な特許群Aを保持していても、相手方が特許群Aの存在に 気付いていないので、特許群Aを保持しているだけでは威圧効果が発揮されることはあり得ない。

(5)〜(7)の場合は、特許群Aの権利者が権利行使に積極的であり、強大な特許戦力を持っているので 大変に警戒しなければならないという評判を、業界内で行きわたらせることで、減少させることが可能である。 そうすると、威圧効果とは、(5)〜(7)の場合へのパワーと言うことになる。
したがって、特許出願するだけとか、特許権を取得するだけでの威圧効果では(1)〜(4)の場合には 対応できないということが判る。

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