106. 商流を活用した特許戦略

通常の場合、自分の重要顧客の特許権を侵害しようとする企業は、いません。
気付かずに重要顧客の特許権を侵害していても、後でそれに気付いた場合、謝罪とともに侵害回避をしよう とするものです。また、重要顧客の特許権を無効にするための手続きをしようとは、通常はしません。
これは、裏を反せば重要顧客に特許権を侵害されても泣き寝入りをする場合が、現実には少なくないという ことを推測させます。重要顧客と自社の事業分野が一部分において重なる場合に、そのようなことが発生し ます。自社がせっかく開拓した新規事業分野が世間的に有望な市場であると認知されると、自社の既存事業 分野の重要顧客がその新規事業分野に進出してきて、自社特許権を侵害してもなかなか、自社の既存事業で の商売のことを考えて、その重要顧客に特許権の行使ができないということが起こり得ます。

しかし、これでは将来の事業の種である新規事業を育てることがなかなか困難ということになります。
そこで、「顧客の顧客との連携」を採用します。自社の既存事業の重要顧客にとっての重要顧客の中で、 自社と補完関係となる企業を探し、そのような企業との共同研究をすることで、自社の新事業領域における 特許権を、その企業との共有特許権として取得するのです。
このようにして取得した共有特許権を、自社の新事業領域に参入してきた自社の既存事業の重要顧客に対し て、共有者とともに権利行使をすることは、非常にやりやすくなります。
その結果、自社の新規事業を、自社の既存事業の重要顧客に侵食されることが少なくなります。これは、ま さに顧客関係という商流をうまく活用して、自社の特許戦力を増大させるという特許戦略となっています。
成功のポイントは、適切な「顧客の顧客」を選択し、友好な関係をその企業と築くということだと考えます。

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